ユニコーン『Z』全曲解説 その4

ユニコーン『Z』全曲解説 その4

6 SAMURAI 5
作詞・作曲:阿部義晴。ボーカルも阿部B。
「ゼーット!!」という雄叫びで始まる、シンプルでストレートで
前向きで陽性な、80年代末期~90年代初期に日本全土を
吹き荒れたバンドブームどまんなか、みたいな曲。
要はビート・パンクですね。それをてらいなく正面からやっている感じ。
ただし。言うまでもなくユニコーンは、かつてそのバンド・ブームの
頂点にいたバンドだが、そういう、いわゆるビーパン(ビート・パンクを
略してそう呼んだのでした、当時)っぽい音楽性のバンドではなかった。
正しく言うと、そういうトーン……はっきり言うと、時流に合わせるために、
ワザとビーパンのフリをしたのだと僕は思っているが、
1stアルバムと2ndアルバムには何曲かあるけど、3 枚目の『服部』以降、なくなった。
そのあたりで本性をむきだしにしたというか、時流に合わせる
必要がなくなった、ということだと思う。
で、1枚目と2枚目のビーパンっぽい曲、たとえばそれは「MAYBE BLUE」だったり
「PINK PRISONER」だったり「SUGAR BOY」だったりするわけですが、
そういう曲は、ライブでもやらなくなった。
という意味では、この曲、貴重っちゃ貴重だし、レアっちゃレアなわけです。
ユニコーンがこんな、どストレートなことをやっている、というのは。
ただ、歌詞、言葉ヅラだけを追うと大マジでアツいし、タイトルからして
「SAMURAI 5」なんだけど、たとえば「Z LIFE」や「デジタルスープ」に
比べると、ストレートすぎるがあまり「ワザとやってます」感が拭えないなあ。
と思いながら聴いていると、間奏に阿部Bの語りを入れることによって、
「はい、ね、ワザとです」とネタばらしをしているような、そんな曲です。
あと、阿部Bがプロデュースしたバンドの曲に、なんか全体にトーンが似ている。
はい、氣志團です。ビート・パンクを批評している感じと、かといって、
ただおちょくってるわけじゃなくて、そこに愛もある感じが、近いと思います。

7 明日
作詞・作曲:奥田民生。ボーカルも奥田民生。
横ノリでブルージー、いわゆるストーンズ・タイプのロックンロール。
「頼みたいぜ」といい、このユニコーンのアルバムには、そんなような、
「古いロックのスタイルの曲を持ち寄ります」っていう
姿勢で臨んだんでしょうか、OTは。
歌詞は、「明日」というキーワードがまずあって、そこからどんどん言葉を
転がしていった、そしたらなんかポジティヴな仕上がりになった、みたいな感じ。
ただ、「明日は きっとできる気がするよ」で始まって、
「明日できたら どうなるだろう 気になるのさ」を経由して、
「できてしまうとかわりに何を うしなうのか」に行き着くあたり、
「さすがOT」と、唸りたくなります。
あと、OTの歌に阿部Bがほぼ全編にわたってべったり
ハモっており、ほとんどツイン・ボーカルみたいになっているところが素敵。
ライブで聴いたらかっこよさそう。
それから、サビ以外は、ずーっとカウベルが入っています。
クレジットを見ると、叩いているのはOT。
つまり、ライブでこの曲をやる時は、ずっとカウベルを
コンコン叩きながら歌う、ということですね。
前作の「WAO!」といい、復活以降、カウベルづいているようです、OT。


次回に続く。
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