大震災で問われる「幸せとは何か」
「OECD幸福指数19位」は日本が大きく変わるチャンスだ
幸せとは何か---。国民の幸福度をどうやって測るのかは、経済学にとって悩ましいテーマだ。長い間、経済成長することこそが幸せだと考え、GNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)を指標として使い続けてきた。だが、こうした成長一辺倒の考え方が、環境問題や資源不足、社会問題などを引き起こすに及んで、GNPに代わる指標を求める動きが強まっている。
経済成長の旗振り役とも言える国際機関、OECD(経済協力開発機構)も、国民の生活の豊かさを測る新しい指標の開発に取り組んできた。日本でも民主党政権が発足し、菅直人首相が施政方針演説で「最小不幸社会」というコンセプトを打ち出したが、これも幸福とは何かを追求しようというOECDなどの世界的な動きと連動したものと言える。
「安全」第一位だったが
そのOECDが5月24日、各国の幸福度を国際比較するための新指標として「より良い暮らし指標(Your Better Life Index)」を公表した。
加盟34ヵ国を対象に、「住宅」「収入」「雇用」「コミュニティ」「教育」「環境」「ガバナンス」「健康」「生活満足度」「安全」「ワークライフバランス」の11項目を指数化したものだ。OECDとしてはそれぞれの指標での国際比較をすることが主眼で、総合ランキングすることに重点が置かれているわけではない。とはいえ、日本はいったい総合何位なのかは気になるところだろう。
そこで、11項目の指数を単純平均してランキングすると、右の表のような順位になる。34カ国中トップはオーストラリア。これにカナダ、スウェーデンと続く。日本は19位だ。ほとんどの西洋先進国の後塵を拝し、日本より下位のG8はイタリア(24位)のみ。
多分に西洋的な幸福感が反映されているとはいえ、残念な結果ではないだろうか。
「ウサギ小屋」という揶揄は聞かれなくなったが、「住宅」指数の順位は23位と真ん中より下。「ワークライフバランス」に至っては32位と、下にはメキシコとトルコしかいない状態で、相変わらずの「働き蜂」「会社人間」ぶりだと見なされている。「環境」や「健康」「生活満足度」の指数でも順位は真ん中より下だった。また、政府の透明性や説明責任を果たしているかといった「ガバナンス」でも順位は低かった。
一方で、日本の評価が高かったのは「安全」で34ヵ国中1位。「教育」もカナダ、フィンランド、韓国の同率1位に次ぐ4位だった。また、「収入」指数も7番目である。
今回の「より良い暮らし指標」は、一般的に使われているGDPなどの順位とは大きく異なる。GDPはどれだけ多くのモノやサービスを生み出したかを表す。GDPの総額が大きい順に並べたのが右の表だ。
もちろん、日本のGDPの総額順位はOECD加盟国では米国に次いで2位である。落ちぶれたと言っても大きな富を生み出している日本だが、国民がそれで幸せか、ということになると、順位が大きく後退してしまう、というわけだ。
また、GDPを人口で割った国民1人当たりGDPでみると16位。「より良い暮らし指標」の順位はさらに下の19位だから、国民1人が生み出した富の量では測れない「幸せ」指標で他の国々に負けていることになる。
トップのオーストラリアはなぜ幸せなのか。11分野でみると「健康」「ガバナンス」がトップで、「住宅」も2位。「雇用」や「コミュニティ」「生活満足度」も高かった。真ん中以下の順位だった指数は「ワークライフバランス」だけだ。
2位のカナダはどうか。「住宅」と「教育」がトップで「生活満足度」が2位、「健康」「安全」も順位が高かった。すべての項目が真ん中以上の順位になっている。