6月9日 IAEAと日本政府は利益共同体 小出裕章 (ビデオニュース)

2011年6月9日(木)、ビデオニュース・ドットコムのスペシャル・リポートに小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)が電話出演されました。神保哲生氏による鋭いインタビューですが、無料で公開されています。

スペシャルリポート (2011年06月09日)
IAEA報告書は原発を継続するためのもの

番組内容

 政府は福島原子力発電所の事故を受け日本政府は、28項目に及ぶ安全強化策などを含む福島原子力発電所の事故に関する報告書を、7日、国際原子力機関(IAEA)に提出したが、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は、この報告書は原子力発電を続けるためものであるとして、これを批判した。
 この報告書は20日からウィーンで開催されるIAEA(国際原子力機関)閣僚級会合を前に日本政府がIAEAに提出したもので、地震や津波の想定範囲や、シビアアクシデントへの対応策など、これまでの安全対策の不備を認め、強化策を明らかにするというもの。
 報告書を発表した細野豪志首相補佐官は、この報告書には政府が保持している原発関連の情報はすべて記載したと語り、事故発生以来、とかく情報開示の遅れや隠蔽などで批判を受けることが多かった政府の情報公開のあり方に、自信のほどを見せた。
 しかし、小出助教は、IAEAが原発を推進したい国々の思惑に基づいて組織されているため、日本の報告書も、原発の継続を正当化するための材料に使われる可能性が大きいと、警鐘と鳴らす。
 小出助教に最新の原発の状態や放射能拡散の現状、原発の事故検証委員会のあり方などについて、神保哲生が話を聞いた。

小出先生部分の要約

・(ここ1〜2週間で福島原発について特に指摘すべきことは?)劇的には変わらなかった。どんどん追い詰められている。作業員の被曝や汚染水など、ますます困難になっている。周辺の人々の被曝、特にこどもの被曝は大変心配だ。

・(汚染水の浄化システムの試運転が今月中旬に始まる。ゼオライトを使い、セシウムを60〜70%除去できるという。これの意味と効果は?)海への汚染水流出を考えると、やらないよりはいい。それより大切なのは増え続ける汚染水をどうするか。11万トンたまっており間もなく溢れる。梅雨の雨で海に流れていくだろう。

・(福島市内でストロンチウムが検出された。これについては?)カルシウムと同じように骨に蓄積してしまい、一度蓄積すると排出されない。セシウムより影響は大きいが、ストロンチウムはベータ線しか出さず、ヨウ素やセシウムより測定が難しい。毒性はヨウ素やセシウムより強い。

・(一般的に発表されている放射線量はガンマ線の分だけ?)そう。ただし原子炉内でできるセシウムとストロンチウムの量はほぼ同じ。今回検出されているストロンチウムの量は、セシウムより桁数がずいぶん少ない。セシウムは事故のときに飛びやすいがストロンチウムは飛びにくいため。これからもストロンチウムが大量に出てくることはないだろう。注意は必要だが、今の福島の経過をみると、セシウムにより注意すべきだろう。

・(保安院が6日に1号機、2号機、3号機それぞれの圧力容器がいつ破損したかの解析結果を出した。また、放射性ヨウ素換算で77万テラベクレルの放射能が出ていたとしている。どう理解すべきか?)数字自体がどこまで正しいかは今でも分からないが、保安院はチェルノブイリのときに520万出たとしている。福島の事故はまだ進行中で、敷地内にも汚染水がありそこにも10万テラくらいあるだろう。最終的にどのくらいになるかは分からない。チェルノブイリのように爆発して大気中に出ると周辺の被曝が多くなるが、福島の場合は地下を汚染して海を汚染し続けるということになると思う。

・(いまのところ海の汚染の深刻さがよく分からないが、どのように広がるのか?)蒸発するものはほぼなく、溶けにくいものが周辺に沈殿し、海に溶けたものは世界中に拡散する。海の汚染を調べるには海藻を調査するのが大切で、どこまで汚染が広がったかはっきり分かる。データはほとんど出てこないが、もし発表されたら誰も汚染エリアの海産物を買わないだろうから、漁業者の損害は甚大なものになってしまう。

・(8日に、2号機の建屋の湿度が高いため二重扉を開放する計画が発表された。放射性物質を出すことになる?)そう。本来はやってはいけないが、そのままでは作業ができないからやらざるを得ないということ。いま危機的な状況にあり、法律を厳密に守って対処することはできない状態。

・(IAEAに日本政府の報告書が出た。メルトスルーの可能性を認め、保安院を経産省から独立させることも書いてあり、28項目あるがどうが?)もともとIAEAは原子力を推進するための組織。日本政府とは利益共同体で、原子力を延命させるために一緒に動いている。事故の真相についてウソはつかないだろうが、安全策を羅列することで乗り切ろうということだろう。ICRPも同じ性質。原子力を存続させるために動いている。

・(事故調査委員会の最初の会合が開かれた。メンバーをどう評価するか?)何の権限もない委員会であり、そんな委員会でおしゃべりをしてどうなるのかと思う。信頼できるのは柳田邦男さんくらい。原子炉プロパーはいないはずで、周辺の人たちが集まっておしゃべりをするようにしか見えない。未来のことを提言するに過去の検証も必要で、過去の検証には責任が伴う。最初から責任を問わないというのはどういうことかと思う。

・(調査権をもったような委員会にすべき?)権限のない委員会など無駄。委員会の提言が生きるような仕組みでないと意味がない。

・(いま何に注意すべきか?)福島では大変な汚染になっている。土や植物の汚染を測定しているが、こどもがそこで生きているとはと思うような汚染になっている。子供たちを被曝から守るための対策が必要で、行政の対応に注目したい。

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