『L.A.ノワール』実機デモリポート――これがオープンワールドアクションの最新形だ!

ゲーム Xbox 360 プレイステーション3
ロックスター・ゲームスから2011年7月7日にプレイステーション3とXbox 360向けに発売される新作『L.A.ノワール』の実機デモプレイを見てきたので、その模様をお伝えする!

●ロックスター・ゲームスが贈る最新作がいよいよ登場

 ロックスター・ゲームスから2011年7月7日にプレイステーション3とXbox 360向けに発売予定の新作『L.A.ノワール』。ロックスター・ゲームスのスタッフによる実機プレイをついに見てきたので、その模様をお届けする。

●本作にまつわる、ある誤解

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 それにあたって、本作にまつわるよくある誤解を指摘しておきたい。それは、本作は“1947年を舞台にした『グランド・セフト・オート』の新作”ではないということだ。「何だ、そうじゃないのか」と、この記事を閉じようとした人はちょっと待ってほしい。

 本作はロックスター・ゲームスが発売する新作のオープンワールドアクションで、1947年当時のロサンゼルスが徹底したリサーチによって再現され、広大なマップをロードに邪魔されずに歩き回り、満喫することができる。確かにその意味では『グランド・セフト・オート』シリーズと、とてもよく似ている。

 風俗や文化のレベルまで再現されたオープンワールド世界、多彩な車と銃、えげつない犯罪、容赦のない会話とストーリーといったチェックリストは、ほとんど“イエス”に丸をつけることができる。ただし大きな違いがふたつ。まず、プレイヤーキャラクターが犯罪者じゃない。そして、本作を開発しているのはロックスター・ゲームス傘下のスタジオではない。

●チーム・ボンディ(Team Bondi)によるロックスター・ゲームス的な挑戦

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▲『The Getaway』は、海外ではソニー・コンピュータエンタテインメント・ヨーロッパ、日本ではカプコンから発売された。

 だが心配する必要はない。本作を開発するチーム・ボンディを率いるブレンダン・マクナマラ氏は、かつてプレイステーション2用オープンワールドアクション『ゲッタウェイ』をディレクションした人物。ロックスター・ゲームスのタイトルに必要なもの、重要なことは何かをすでに知っている。もちろんこれだけでは、タイトルの完成度に異常な執着を見せるロックスター・ゲームスが、なぜ本作に自身の名前を冠することを躊躇しないのかの理由にはならない。それは恐らく、本作がとてもロックスター・ゲームス的な挑戦だからだ。

 マクナマラ氏が選んだのは、オープンワールドアクションを、ギャングによる犯罪ドラマではなく、それを取り締まる側の刑事ドラマとして新たな“ノワール”を描くこと。思い出してみてほしい。近年ロックスター・ゲームスがやってきたのは、『グランド・セフト・オート』で築いてきたオープンワールドの犯罪ドラマというフォーマットを、『Bully』で学園モノに、『レッド・デッド・リデンプション』で西部劇にしてみせることだった。

●戦後の混乱期に描かれる刑事物語

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 本作の主人公コール・フェルプスは、第2次世界大戦から復員後、名高い“LAPD”ことロス市警にやってきた新米警察官。プレイヤーはフェルプスとして、戦後間もない混乱期に起きる事件の数々に遭遇し、その解決を目指すことになる。

 ゲームはフェルプスが配属される部署によって分かれており、最初はパトロール課からスタートして、進行とともに昇進・転属によって異なる部署へと進んでいくようになっている。本作でプレイできるのはパトロール課のほか、交通課、殺人課、風紀犯罪課、放火特捜課の全部で5種類。警察である以上当然のことながら、事件を未然に防ぐことはほとんどない。事件が起こってからフェルプスの出番がやってくるのだ。だからゲームの進行は、事件ごとにも分かれている。

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●手掛かりを武器に真犯人をあぶり出せ

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 今回のデモでは、交通課パートに属するケース(事件)“堕ちた偶像”のプレイを見ることができた。メニュー画面から“堕ちた偶像”をスタートすると、カットシーンからスタートする。天気の荒れた夜、人気のない丘に一時停止したクルマに不審な男が細工をし、斜面を走らせる! 崖を飛び出さんとするクルマ、丘から立ち去る男……。

 事件のオープニングは、まるで刑事コロンボが出てきそうな、サスペンスか推理ドラマのような演出で始まる。あの男は誰なのか、なぜ事故に見せかける必要があったのか? それをこれからフェルプスが暴くのだ。

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 画面が暗転すると警察署での捜査会議が始まり、フェルプスはひとまず相棒のビコウスキーと事件現場へと向かうことになる。刑事ドラマでおなじみ“バディ(相棒)”的存在であるビコウスキーは、ドライブ中はGPS(この時代には存在していない)の代わりにもなっていて、ボタンを押すことで「次の角を左に曲がれ!」などと教えてくれる。

 現場に到着したら実況見分だ。クルマから発見されたふたりの女性は、どうやら幸運にも大きな怪我はないようだ。鑑識はふたりが薬によって昏倒させられていたことが彼女たちの身を守ったことを示唆している。これは恐らくプレイヤーがすでに知っている謎の男によるものに違いない……。

 現場の捜索で何か手掛かりになりそうな物に出くわすと「ピーン」とピアノの音が鳴り、ボタンを押すことでじっくり見ることができる。発見した手掛かりや聞き込みでわかった情報は捜査手帳に記されていき、後の捜査に役立てることができる。猿の生首の作り物、破り取られた下着、謎の手紙……一見、何の関係もなさそうな手掛かりが、捜査によってやがて1本の線で繋がってくる。

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●新技術が可能にした、新たなドラマの可能性

 捜索で手掛かりを集め、関係者への聞き込みで点と点を繋いでいく……ここで重要になってくるのが、チーム・ボンディの子会社が持つ新技術“MotionScan”だ。

 この技術は、32台のカメラを使って俳優の表情をキャプチャーするというもの。カットシーンでは、MotionScanだけでなくモーションキャプチャーも組み合わせているので、俳優の身振り手振りと、セリフを話す間や表情の機微の双方が高度に再現されている。「じゃあもう実写でいいじゃん!」と思うかもしれないが、そうするとゲームらしく自由に世界を歩き回るのが難しくなる。没入感のあるオープンワールド世界と、リアルな演技の融合の(現在の)最適解が本作というわけだ。

 こうして感情表現がリアルになったことで、聞き込みにこれまでにない緊張感が生まれている。これまでならば、動揺や嘘を示すために、わざとらしいほどの演技をさせたり、何かアイコンでも出さなければいけなかったろうが、もはやそういったサインは必要ない。

 聞き込みは、信用する、疑う、反証するという3つの選択肢をベースに行う。「この関係者は何か隠しているのではないか、いまの発言は嘘ではないか?」と疑いながら、対象の表情や間を読み、これまでに集めた手掛かりを頼りに真実へと迫っていくのだ。

●シリアスな犯罪劇に関わる厄介な面々

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 だが、出てくる連中はどいつもこいつもひと癖もふた癖もある厄介な連中ばかり。シリアスで緻密な人間像と複雑な背景を持ったキャラクターたちも、本作がロックスター・ゲームス開発でなくとも間違いなくロックスター・ゲームスらしいタイトルであることを証明している。

 “堕ちた偶像”で被害者として出てくるのは、マフィアのボスと結婚した映画女優ジューン・バラードと、女優志望の若い女性。ジューンはこの事件は夫がカタをつけると言っているのだが、一体誰に対して? フェルプスを誘惑してみせるなど老獪に真実を隠し通そうとする彼女を、捜査手帳にメモした手掛かりを軸に問い詰めていく。ひと通りの情報を聞き出すと、今度は病院に運び込まれた若い女性が目を覚ましたとの報を受け、こちらからも情報を聞き出す。その過程で、捜査線上にとある映画プロデューサーと性犯罪の影が浮かび上がってくる……。

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 ジューンをクルマで尾行するパートもあり、ここでもいくつかの情報が手に入る。情報に従ってとある場所に向かうと、その途中で本部から不審者出現の報が入り、急行することに。事件が一気に動き出す。間に合えば暴漢との格闘になり、遅くなるとすでに立ち去った後の到着となる。ドライビングテクニックも重要なのだ。そしてここでも新たな手掛かりが入ってくる。

 若い女優が朦朧とする意識の中で思い出した人魚は、くだんの映画プロデューサーがよく出入りしているスタジオに掲げられていた。捜索を行うと、そこには事件現場で見かけた猿の生首が……。

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 ネタバレになってもいけないので、今回はここまで。本作でプレイヤーは、実際に起こった未解決事件“ブラック・ダリア事件”をベースにしたものをはじめとする、売春、レイプ、ドラッグといった問題を背景とする、さまざまなケースを目撃することになる。混沌とした時代の爛れた欲望が引き起こす惨劇の数々……。トライベッカ映画祭への招待もされた、一流のサスペンスをぜひ味わってみてほしい。なお、初回特典として限定の追加シナリオ“裸の町”も用意されているので、じっくり味わいつくそうという人はお忘れなく。

(C) 2011 Rockstar Games, Inc.
※本ソフトはCEROにより“18歳以上のみ対象”の指定を受けておりますが、掲載にあたっては、ファミ通ドットコムの掲載基準に従い考慮しております。

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