<高校野球北北海道・十勝地区大会:抽選会>◇16日

 第93回全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)の北北海道十勝地区の組み合わせが決まった。士幌は、88年から公式戦に出場しているがこれまで未勝利。初白星を目指す選手の励みになればと、保護者が1勝で地元名産の士幌牛を振る舞うことを約束。士幌ナインが牛からも力をもらい、念願の初勝利を目指す。

 士幌の初勝利を地元名産品の「士幌牛」が後押しする。雄大な山々に囲まれた同校グラウンドに、大きな声が飛び交った。選手たちは真剣な表情で白球を追いかける。初勝利を目指すエース力石(ちからいし)明主将(3年)は「先輩たちも目指してきたことを、自分たちの代で達成したい」と表情を引き締めた。

 勝利への源は“牛パワー”だ。力石の父憲二さん(63)は、地元名産品のブランド牛「士幌牛」となる食用牛を飼育する酪農家。2年前、息子ら部員を送り迎えをする車内で、ナインたちが初勝利した際にはステーキを振る舞う約束をした。「子どもたちの励みになってくれれば」と話す。地元名産品の士幌牛のステーキは500グラムで数千円以上もする高級肉もある。

 中軸の佐藤修輔捕手(3年)は「勝って気持ちよく食べたいですね」と選手の思いを代弁した。モチベーションも上がっている。同校は農業科のみ。部員たちは普段の授業でも、搾乳などの実習を行っている。力石主将は「牛は一生付き合って行く仲。パワーをもらえる」と日頃から愛情を注いでおり、牛の大切さも理解している。

 部員不足の低迷期を経て07年秋に復部。今年は1年生4人が入部し部員9人で夏の勝利を目指す。主戦の力石や佐藤を含み経験者は7人と戦力もそろう。高松和博監督(48)は「ムードも悪くないし、チームとしての形もできている」と手応えを口にする。

 人数が4人だった冬期間は、足寄や上士幌と合同チームを作り実践的な練習を積みレベルアップ。現在もスクールバスの関係などで練習時間は約2時間弱だが、限られた時間で目的を持ち練習している。9日からは同校で3泊4日の強化合宿を行い最終仕上げもした。力石は「全校応援だし気合も入っています」と意気込む。公式戦は13連敗中だがこの夏、士幌ナインは勝って新たな歴史を刻む。【石井克】