著名SF作家たちが語る、ゲームの小説化へのこだわりとは?【Comic‐Con International 2011】

ゲーム Xbox 360
ゲームのノベライズ(小説化)をテーマにしたパネルディスカッションの模様をお届けしよう。グレッグ・ベアなど著名SF作家らが語るノベライズの難しさとは?

●作家とゲームクリエイター、それぞれの立場の登壇者が語る

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▲そうそうたる顔ぶれを集めて、ゲームの小説化に関するセッションが行われた。

 キャラクターを中心とするコンテンツのイベントComic‐Con International 2011(以下コミコン 2011)が2011年7月21日〜24日の4日間、アメリカ・サンディエゴにて開催。開催2日目の2011年7月22日に行われた“Writing in Video Game”は、ゲームのノベライズ(小説化)をテーマにしたパネルディスカッション。参加したパネリストは以下の通り。

グレッグ・ベア:『Halo(ヘイロー)』の小説を担当
デビッド・ガイダー:『Dragon Age』の小説を担当
ジョン・シャーリー:『Bio Shock』の小説を担当
トニー・ゴンザレス:『Eve Online』の小説を担当
フランク・オコナー:343 Industries
ケビン・グレース:343 Industries
カレン・トラヴィス:『Halo(ヘイロー)』、『ギアーズ オブ ウォー』の小説を担当

 グレッグ・ベアやジョン・シャーリーといったSFファンにはおなじみの作家の名前が観られるのが何とも豪華だが、ゲーム制作側と作家という両方の立場のクリエイターが参加して、盛んに意見が飛び交った。パネルディスカッションは、進行役が質問を投げかけて、それに対して各クリエイターが返答をするというスタイルで行われた。ここでは、そのうちからとくに興味深い発言を紹介していこう。

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グレッグ・ベア

デビット・ガイダー

ジョン・シャーリー

トニー・ゴンザレス

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フランク・オコナー

ケビン・グレース

カレン・トラヴィス

Q.ゲームのノベライズについてどう思うか?

ジョン・シャーリー:初期のゲーム開発では、ストーリーは適当で、誰かの知り合いが書いてくれる……などといったことが多かった。徐々にアートとして進化してきており、ノベライズの難しさを感じた。『BioShock』の小説を手がけたときは、オリジナルのライターと長いあいだ苦労しながらやりとりをしたので、とてもよいものになったと思う。

カレン・トラヴィス:コミック、小説、ゲームはそれぞれが異なるメディアなので、異なる対応をしなければならない。たとえば、ゲームの場合は技術的な制約があり、ストーリーを変えなければならない場合もある。ノベライズの仕事も作家がアイデアを出しているので、オリジナルの仕事として捉えるべき。

Q.ゲームのノベライズは傭兵のような役割か?

フランク・オコナー:『Halo(ヘイロー)』のノベライズで作家に仕事をお願いするときは、まずその人のオリジナル作品の考えかたを見る。『Halo 3(ヘイロー3)』ではエイリアンについて語る必要があるが、カレン・トラヴィスならできると思った。カレンには、「このような方向で一定の設定は提供しますが、ここからここまでのあいだは自由にやってください」という形でお願いをした。グレッグ・ベアの場合はもっとシンプルで、エイリアン対フォアランナーのクラシックなSFを書いてくれる候補者を周囲に聞いたところ、グレッグの名前がすぐにあがった。仕事をお願いするときは、作家の既存のスキルをベースに考慮する。

トニー・ゴンザレス:私はプログラムなどでゲームに関わっていろいろな仕事をしているうちに、小説を書くようになった。『Eve Online』のようなMMO(多人数参加型)と『Halo(ヘイロー)』のようなゲームとでは異なるので、ノベライズはチャレンジングな部分もある。これからも『Eve Online』の小説は長く続けていくので、つきあってほしい。

デビッド・ガイダー:世界観はゲーム制作側が提示して、アイデアや具体的なエピソードはそれぞれの作家が能力を活かして提供する。

ケビン・トラヴィス:ゲームのチームと作家がマッチするかどうかが大切だと思う。スケジュールが自分でこなせるものになっているか、また何を提供できるかを確信できなくてはいけない。

ジョン・シャーリー:ゲームと自然にコラボできる人もいるが、私は努力が必要だった。ガムを噛みながらバレエを踊るように、いろいろなことをマルチにこなさなければいけないので、徐々に学習していった。

Q.ゲームのノベライズと自分のオリジナルな部分との関係をどう考えているのか?

グレッグ・ベア:『Halo(ヘイロー)』のようなSFは、ある意味で古典的なストーリーなので自分がやってきたことからそれほど遠くはない。ノベライズを書きながら自分が子どものころ読んだアーサー・C・クラークなどの作品とのつながりを感じた。だが、このような驚くべきビジュアルを持つ作品のストーリー展開に役立てるのはとても素晴らしいことだ。自分のストーリーやユニバースはすべて自分で書くわけだが、『Halo(ヘイロー)』は細かいところまでできあがっており、このチームが自分のオリジナル作品を書く手伝いをしてくれたらなと思う。『Halo(ヘイロー)』を手掛けるにあたって魅力的だったのは、やはりファン。ゲームのファンは私にとってとても大事で、息子のエリックも『Halo(ヘイロー)』の大ファン。ファンに会って話してアイデアを聞いたが、いっしょに世界観を共有するのがとても楽しい人たちだった。彼らをとても誇りに思う。ファンが我々を支えてくれている。

Q.キャラクターを自分のものとして自由に動かすことに難しさを感じるか?

カレン・トラヴィス:自分だけのキャラを発展させたいという思いはある。自分の頭の中で意味のあるものでないと、発展させられないことが多い。『ギアーズ オブ ウォー』では、マーカスの頭の中には入っていけないが、彼の反応は理解できる。理屈に合っていて、信用できること、読者が共感できることが大切だ。

トニー・ゴンザレス:象徴的なキャラの場合は、自分では自由にならないことが多い。

ジョン・シャーリー:とにかくファンがいい印象を持ってくれることが大切。これはある程度経験を積んでわかったことだ。

Q.ゲームをしっかりとした作品(アート)にしなければならないというプレッシャーを感じるか?

デビッド・ガイダー:とにかくすぐれたストーリーを書くように努力している。楽しくて素敵な経験ができる小説であればよいのでは?

グレッグ・ベア:システィナ礼拝堂の天井壁画は、原作(旧約聖書)に基づく形で制作されたことを指摘したい。

 ちなみに、海外のゲームノベライズ作品が、日本で翻訳して出版されるケースは極めて稀だ。ゲーム開発者や作家が、オリジナル(ゲーム)と遜色ないほどのこだわりを持って作った小説が、もっと日本でも接する機会が増えることを期待したいところだ。

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