国語入試問題必勝法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国語入試問題必勝法』(こくごにゅうしもんだいひっしょうほう)は、清水義範1987年に発表した短編小説。また、同年に講談社から出版された表題作を含む短編集(第9回吉川英治文学新人賞を受賞)も同タイトルである。ここでは前者について述べる。

関西テレビ岸部一徳主演でドラマ化している(放映時期は不明だが、1987年とする資料もある[1])。

2000年1月時点で、短編集『国語入試問題必勝法』の単行本は7万7000部、文庫本は20刷・28万部を発行している[2]

2009年に筑摩書房から出版された『インパクトの瞬間――清水義範パスティーシュ100 二の巻』に再録。

概要[編集]

小説現代』(講談社)1987年3月号に「入試国語問題必勝法」として発表。国語が不得意な受験生の浅香一郎(あさかいちろう)に、家庭教師の月坂(つきさか)が、現代文の問題の解き方を教えるという物語である。

この作品中で月坂が述べる解法について、作者は、小説集のあとがきで「虚構」だと述べている。また、翌年に発表したエッセイ「我が『必勝法』と共通一次試験国語問題」(講談社刊『パスティーシュと透明人間』所収)において、「出鱈目必勝法」[3]だと書いている。彼はエッセイの中で、未読の読者のために、自ら、必勝法のいくつかを明かしている。ここではそれらについて触れる[4]

大、小、展、外、誤
「内容に最も近いもの」を4つないしは5つの選択肢から選ばせる問題を解くための方法。選択肢は、本文に書かれてある内容を一般論に拡大したもの(大)、本文の一部だけをとったもの(小)、本文の論理を展開したもの(展)、本文の内容と少しずれているもの(外)、単純に間違っているもの(誤)から成り、正解は「外」にあるというもの。
長短除外の法則
問題文を読まずに正解を見つけるための第一の方法。選択肢のうち、文章が一番長いもの、一番短いものは正解ではない(ため、除外してよい)。
正論除外の法則
第二の方法。正論のようなものが書かれている選択肢ははずしてよい。

作者は後日、1988年度大学共通一次試験の「現代文」の問題において、「長短除外の法則」を検証している。その結果、11問中8問がこの法則に当てはまったとしている[5]

英訳[編集]

アルフレッド・バーンバウムによる英訳版 "Japanese Entrance Exams for Earnest Young Men" は、1991年に講談社インターナショナルから出版されたアンソロジー『現代ニッポン短編小説集 / Monkey brain sushi : New tastes in Japanese fiction』に収録された。

派生作品[編集]

志名坂高次の漫画『受験の帝王』は、著者からの了承を得た上でこの作品を原案を元に描かれた。[6]

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 国語入試問題必勝法 - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇”. テレビドラマデータベース. 2020年5月11日閲覧。
  2. ^ 「[ロングセラーの周辺]『国語入試問題必勝法』清水義範著」『読売新聞』2000年1月15日付東京夕刊、6頁。
  3. ^ 清水1995、257頁。
  4. ^ 必勝法の出典は清水1995、258-259頁による。
  5. ^ 清水1995、259頁。なお、選択肢6個中ランダムに2個選択した場合に2問とも不正解を選択する確率は66.7%であり、有意な差があるかどうかは議論の余地がある。
  6. ^ 受験の帝王 4 142ページ - マンガ図書館Z