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2011年8月8日15時0分
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遺体安置1日10万円も 被災者苦しませる高額請求

図:各地の消費生活センターに寄せられた主な苦情・相談拡大各地の消費生活センターに寄せられた主な苦情・相談

 東日本大震災の被災地で葬儀をめぐる苦情が相次いでいる。遺体の安置が1日10万円、ドライアイス代も1万円……。高額な請求が被災者を苦しませる事例がある。犠牲者の葬儀はお盆前のいまも営まれており、業界団体が注意を呼びかけている。

 「遺体安置料 80万円」。津波で妻(52)と母(81)を亡くした宮城県石巻市の会社員の男性(55)は請求書の数字に驚いた。

 近くの葬儀社に頼んで遺体を4日間斎場に安置した後に火葬。数日後に葬儀を済ませていた。

 「なぜこんな高いのか」。男性が問い合わせると、担当者は「斎場に安置する手数料が1人1日10万円。他のご遺族も同様に払ってもらっている」と説明したという。渋々支払ったが、5月に同じ葬儀社に依頼した知人は、安置料を請求されなかったという。

 「震災の混乱に乗じてふっかけられたのかも。納得いかない」と男性は憤る。安置料の相場は1日数万円とされ、県葬祭業協同組合も「一般的に安置料1日10万円は高いと思う」と言う。

 仙台市の会社役員の女性(52)は、義母(80)が4月7日の震度6強の余震で心臓病を悪化させて亡くなった。近くの寺に安置したが、市の火葬場はいっぱいで予約を取れたのは15日後。寺の出入りの葬儀社が遺体の管理をしたが、腐敗防止用のドライアイスだけで1日1万円、計15万円を請求された。

 県内の葬儀関連品卸業者によれば、ドライアイスは1回分(10キロ)が3千〜6千円程度という。女性は「高いと思ったが、異常な天災だったので仕方がない」。

 国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた震災関連の葬儀に関する相談は3〜6月で31件。岩手、宮城、福島、茨城4県に29件が集中する。「葬儀社から高額な請求をされた」「料金が不明瞭で説明が足りない」といった内容が多い。

 葬儀費用が公費でまかなわれるという誤った説明で、高額な契約をさせられた事例もあった。災害救助法では、震災の犠牲者の遺族が負担した火葬代や棺代などは約20万円を上限に公費で負担されるが、葬儀は対象外だ。

 苦情の対象となった宮城県の葬儀会社の一つは震災後に代金を引き上げたことを認め、「損傷が激しい遺体の処置や、膨大な件数の葬儀対応で経費がかかっている」と説明した。

 一方、同県最大手の「清月記」は震災後、1日あたり5万円の安置料を期間にかかわらず一律15万円とする特別料金を設定した。菅原裕典社長は「非常時でもご遺族の要望に最大限応じるよう努めた」と話す。

 被災地では今も連日葬儀が営まれている。震災直後に火葬だけ済ませた遺族が改めて葬儀をしたり、行方不明者の家族が「お盆前に一区切りつけたい」と供養したりするケースも多いという。岩手県大槌町の大念寺では「多い日は1日で8件」、同県陸前高田市の普門寺も「お盆前後が忙しくなりそう」という。

 宮城県葬祭業協同組合の倉島義彦理事長は「業者どうしで話し合って料金を設定すれば独占禁止法に触れる可能性もあり、料金は業者の判断に任せている。一部で不届きな業者がいるようだが、指導する立場にない。事前に見積もりを取るなどして業者を選んで欲しい」と話す。(中村信義)

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