2011.10.11
# 雑誌

全国民必読
まやかしの再雇用 いつわりの年金
「仕事はない、年金は大幅減額」
60過ぎたら、この世は地獄

 ハッピーリタイアメント、定年後は悠々自適など、夢のまた夢。地獄が待っていた。当てにしていた年金は先延ばしにされたうえ、大幅減額。代わりに用意したという職場では邪魔者扱い。この国はおかしい。

平均年収200万円

「入社以来、事務部門に勤務していました。退職前は課長職になり、部下も十数人従え、年収は1200万円あった。定年後、再雇用を希望すると、『幸い、北海道の営業所で販売課長の職が残っていますよ』と言われたので、年収は300万円台に下がるけれど、2~3年は働けるだろうとホッとしていたのですが・・・・・・。

 いざ赴任して与えられた仕事は、カバン片手に中小零細企業を回って、新規顧客を開拓する営業職。部下はひとりもいない代わりに、販売課長という肩書を持った再雇用者がすでに4人いて、誰もが毎日必死に走り回っている。営業経験がなかった私は、まったく契約が取れぬまま精神的に参ってしまい、3ヵ月で辞めて東京に戻りました」(大手事務機器メーカー・61歳)

 国民年金はすでに支給開始年齢が順次上がっているが、2013年度から厚生年金の報酬比例部分も現行の60歳から3年ごとに1歳ずつ上げられ(男性の場合)、最終的に65歳が年金支給開始年齢となる。

 だが、大多数の企業の定年は60歳。企業年金が整備されていない会社も多く、無収入・無年金生活が現実のものとして迫ってきた。

 こうした事態を避けるため、65歳までの雇用を確保しようという趣旨で生まれたのが「継続雇用制度」のひとつである「再雇用制度」。政府が'04年に高年齢者雇用安定法を改正してつくった制度で、定年退職者を企業が一度退職させて再び雇用するというものだ。

「政府は、定年の引き上げか定年の廃止、あるいは継続雇用制度の導入のいずれかの措置をとることを企業に求めました。この中から企業はどれを選択したか。'10年6月1日現在、社員30人以上の規模の会社で、定年を廃止したのは2.8%、定年を引き上げたのは13.9%、対していわゆる再雇用制度を導入した会社は83.3%と、圧倒的に多かったんです」(『よくわかる継続雇用制度導入の実務と手引き』の著書がある、特定社会保険労務士の川端重夫氏)

 現在の日本では、60歳を過ぎて新たな再就職先を探そうにも、高齢がネックになってやりたい仕事はなかなか見つからない。ましてコンビニでレジ打ちをするよりは、それまでお世話になった会社に残ったほうが、働きやすいはず。だから、企業の再雇用制度導入には大賛成と思う人は多いかもしれない。

 しかし、冒頭の告白にもあるように、再雇用制度は多くの〝不幸〟を孕んでいる。

 まず第一に、給与が大幅に下がることを覚悟しなければならない。

 一般に、企業は再雇用者の賃金を定年前の給与の3分の1程度に抑えている。平均的な再雇用者の年収は200万円台で、300万円台だったり、賞与が払われるなら恵まれているほうだ。中にはアルバイト同然の時給制になっている企業もある。

「うちの再雇用システムは契約社員として、1年ごとの更新制をとっています。給与は時給にして900円弱。勤務形態は週4日、1日8時間労働なので、1ヵ月の給与は約14万円。少ないとは思いますが、毎日、ハローワークで職探しをするよりはましだと割り切って働いています」(元大手通信会社管理職・61歳)

 時給制の場合、最低賃金(東京都なら837円)以上なら、再雇用者はその条件を呑まざるを得ない。彼らの中には、年収が定年前の5分の1になったというケースもある。すなわち、会社側は戦力としてはほとんど期待していないということの表れだ。しかも、65歳で再雇用が終了した後は、何の保障もないし、65歳から改めて仕事を探すこともきわめて難しい。

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