委員 高岡 正

 総務省の「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」に対する意見

I1.意見骨子 
 障害者が放送を視聴することは国民の基本的権利であることを確認し、字幕放送、手話放送、解説放送等が計画を持って、拡充されるような方策を提起する。

II2.要望内容
1.放送法による義務付け
 高齢者を含む難聴者は800万人とも1千万人とも推計されるが、テレビの視聴に支障のある人が増えている(※1次世代字幕放送研究会報告2002年4月)。
 障害者、高齢者等を含むすべての国民が放送にアクセスする権利(※2、3参照)を明記し、放送事業者に対して字幕放送、手話放送、解説放送等を実施することを義務づけて頂きたい。
 「放送法第三条四の4  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集にあたっては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。」(資料1の9の2)を、手話放送も含め、義務を明文化する。
 字幕放送は、キー局は過去の実績や国の補助金もあり、国が字幕放送の実施状況を事業者別に公表することで目標を達成しつつあるが、生放送も含めた放送全体を対象とした場合、実績公表方式では無理ではないか。解説放送、手話放送も目標と実施状況の公表だけでは進まず、きちんと法律上に義務付けなければ普及しないと考える。
 国連の障害者権利条約の採択もまぢかであり、国内の障害者差別禁止法制定の議論もあり、合理的配慮の範囲内で実施を義務付ける。新交通、建築物バリアフリー法が改正されたが違反した場合の罰則の規定がある(資料:1の9の2、1の9の3、1の9の4、1の9の5、1の9の6、1の9の7)。
 
2.あらたな視聴覚障害者向け放送の指針の策定
 2007年を目標にした字幕放送拡充の指針の進捗結果を検証し、手話放送、解説放送も含めた目標値を持った指針の作成をして頂きたい。

3.障害者当事者が加わった放送バリアフリー推進のモニタリング機関の設置
 障害者当事者、放送事業者、テレビメーカー等からなる放送バリアフリーに関する諸問題を協議したり、実施状況をモニタリングする恒常的機関を設けて頂きたい。

4.官民一体の取り組みの仕組み
 地上波デジタル放送は放送のバリアフリー推進が目的とされていた。放送事業者、テレビメーカー等が個々に取り組むのではなく、一体になって、取り組む仕組みを構築する必要がある。

4.障害者向け放送を実施している事業者との連携
 CS障害者放送統一機構「目で聴くテレビ」や日本福祉放送へ事業委託やノウハウの交換などを進める。

5.通信と放送の融合に対する要望
 インターネットによる映像配信が普及しつつある。これから光ファイバーの普及も進むので、このコンテンツに対するアクセスの保障が必要である。

※1 高齢者のテレビの視聴の困難さ

※2 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法
 (すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現)
第三条 高度情報通信ネットワーク社会の形成は、すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用の機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、もって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会が実現されることを旨として、おこなわれなければならない。

※3 電気通信審議会答申(平成7年5月)より抜粋
「新たな基本的人権としての「情報発信権」及び「情報アクセス権」の保障

III3.【利用者の視点から要望】(全難聴)
・現在のアナログテレビで字幕を見るデコーダーの給付制度
・地上波放送テレビを年金生活者など低収入者にも購入できる制度
・操作の簡単なテレビ、リモコンの開発
・画面外の字幕、字幕の色、大きさ、位置など選択できる機能
・文字量が多すぎない、読みやすい字幕の追求
・手話放送と字幕と併用できる機能
・映像と音声を遅らせて、生放送の字幕と同期できる機能
・その他