子供の好みから日本のスポーツの状況を見る

バンダイ「お子様の好きなスポーツ選手は?」
バンダイ「お子様の好きなスポーツ選手は?」

おもちゃメーカーのバンダイから「お子様の好きなスポーツ選手は?」というアンケート結果が発表されました。5年ぶりの調査なようですが、当時の結果と比べるとずいぶんと様子が変わりました。
5年前にもブログで感想を記していたので、そちらを眺めながら、何が変わったのかを考えてみました。

男の子の調査結果
男の子の調査結果
5年前の男の子
5年前の男の子
女の子の調査結果
女の子の調査結果
5年前の女の子
5年前の女の子

5年ぶりに発表されたアンケート結果で真っ先に目がいくのは、男女とも1位のアスリート(男子:イチロー、女子:浅田真央)に票が集中しているということです。5年前、私はさまざまな競技の選手が登場していることで、野球だらけだった自分の幼少時と比べて「現代の子どもたちは価値観が多様化している」と喜んでいます。しかし今回は多様化どころか一極集中。グラフを見比べれば一目瞭然ですが、男の子も女の子も上位の選手に人気が集中しています。


たしかにイチローはWBCの大一番で活躍を見せましたし、浅田真央もキム・ヨナとのライバル対決など世界を舞台に活躍しました。調査は5月に行われたようですから、WBCやフィギュアスケートの印象が強く残っていたことも影響しているのでしょう。しかし、それぞれ半数前後の子供が「好きだ」と名前を挙げている状況は異常です。

この「異常」な結果の背景には二つの要素がある気がします。1つは子供に、もう1つはメディアにです。
子供の要因は、スポーツなんか見なくなっちゃったんでしょということ。この5年で子供たちの時間の過ごし方がどの程度、変わったのかは分かりませんが、さしてスポーツに興味のない世間(親)が大騒ぎするスポーツだけ、脇から試合(テレビ)を眺める。あとはゲームやアニメ、勉強で忙しいので、「好きなスポーツ選手は?」と尋ねられれば、「このあいだパパとママが大騒ぎしてたあの選手」ってことになるのは必然です。

もう1つは、メディアの偏向。地上波でのスポーツ中継番組数が減衰し、「世界ほにゃらら」と銘打たれた国際大会ばかりが、盛んに喧伝されて中継される今日。子供たちの目に触れるスポーツ大会も自ずと国際大会ばかりになるでしょう。5年前には「子どもたちの目も、今や世界を見ているのでしょうか? 国内で完結してしまうスポーツは、子どもたちの支持を得づらくなっているように思われます」と感じていますが、それはメディアによって誘導された子供たちの志向なのかもしれません。
バカ騒ぎされる「世界ほにゃらら(WBC、W杯を含む)」を通じて、子供の興味がイチローや浅田真央にばかり注目が集まるのは自然な事態です。既存メディアが、もう少していねいにスポーツ報道をすることができれば、もっと違う結果になったのではないでしょうか。

この2つの事情を通じて見えてくるのは、やはり日本のスポーツが危機に直面している現状です。レジャー(時間の楽しみ方)が多様化している今日において、「日本バンザイ」的な紋切り型の中継番組・報道しかできない(スポンサー獲得のためには仕方ないのでしょう…)旧来のメディア。
これからは、子供たちの興味がスポーツからますます離れ、超有名どころに人気(というか認知)が集中する事態がもっと進むかもしれません。もっと地域のチーム・クラブ・選手に親しみをもてる機会が増えれば、幾分か状況は好転するのでしょうか。メディアにも勇気を持って取り組んでもらいたいものです。