「Amebaなう」はTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか
サイバーエージェント、ミニブログ「Amebaなう」開始へを読んで。
サイバーエージェントがマイクロブログ(ミニブログ)サービスへの参入を発表して話題になっていたようですね。
(Twitter上で一番盛り上がっていたのは、Amebaなう発表自体よりも、サイバーエージェントの藤田さんが自ら「タイミングがわるい」と認める「オリジナルを創りだす」というタイトルのブログ記事がらみだったみたいですが。)
Twitterでは「Amebaなう」への批判的な意見が多かったような印象もありましたが、個人的には実はサイバーエージェントおよびアメブロが、日本のマイクロブログサービスでの成功に一番近い所にいるんじゃないかと思っています。
以前、「twitter night vol.3のプレゼン資料を間違えて作ってしまったので(涙)公開します。」という記事で紹介した、プレゼン資料を作っていたときにも思ったのですが。
アメブロは、Twitterが日本でカバーすべき二つの領域でバッティングします。
一つ目が下記の図で強調したかった、モバイルによるリアルタイムなコミュニケーションプラットフォームとしての陣取り合戦。
米国では、TwitterはiPhoneのブレイクと共に、モバイルで利用するメインのコミュニケーションプラットフォームの座を見事に射止めたわけですが。
実は、日本ではアメブロのような日記系ブログであったり、mixi日記であったり、いわゆるケータイで利用できるモバイルのプラットフォームがすでに普及しています。
この辺は、以前に「日本のウェブは遅れているのではなく、急速に進みすぎたのではないかという仮説」という記事でも書いたのと同じ話です。
mixi日記はクローズドという性質があるため、米国のFacebookとTwitterのように、ある程度マイクロブログとSNSで棲み分けが為される可能性はあると思います。
ただ、アメブロはTwitterと同じくオープンなコミュニケーションなプラットフォームですし、お互い主戦場はケータイでありモバイル。
間違いなく両社は正面衝突するコースの上に乗っているわけです。
で、もう一つ重要な要素になると思われるのが、芸能人とテレビ。
メディアパブの下記の一連の記事を見ると分りますが、実は2009年初めのTwitterの米国でのブレイクは、ブリトニー・スピアーズのような著名人と、CNNなどのテレビ局がこぞってTwitterに力をいれ始めるのと、シンクロしています。
・メディア・パブ: Twitterが強力なニュースメディアに(その2)
・メディア・パブ: Twitterの異常なまでの成長、まだ続いている
・メディア・パブ: 100万フォロワー競争で一段と過熱化するTwitterブーム
これらの一連のブームの一つのピークとなるのが、上記の最後にある、俳優のアシュトン・カッチャーによる100万フォロワー獲得競争。
アシュトン・カッチャーというと、日本ではなじみがないかもしれませんが、あの「ゴースト」のデミ・ムーアの旦那と言えば、認知度の高さは伝わるでしょうか。
彼が「CNNのTwitterアカウントのフォロワーより先にフォロワー100万超えを達成したら、アトランタに住む(CNN創立者の)テッド・ターナーの豪邸に行って、ピンポンダッシュしてやる!」と宣言して、100万フォロワー獲得競争を実施したことで、Twitterは注目のピークをかざるわけです。
米国において、その後の「Twitter」というキーワードの検索数が、ほぼ横ばいになっていることからも、ここがいかに大きなピークであったかというのは良くわかると思います。
プレゼン資料でも、下記のようなスライドを作りましたが。
いまや、米国ではTwitterとテレビの連携も結構出てきているそうで。
結果的に、Twitterのグローバルのフォロワー数ランキングのトップは、ほとんど俳優や歌手が独占しているわけです。
で、実は日本でここが得意なのが、当然、6000人もの芸能人ブログを有するアメブロです。
米国の著名人は、いきなりTwitterがネットでの情報発信の入り口になっていた印象がありますが。
日本の芸能人は、すでにアメブロを中心とした芸能人ブログで、ケータイからの情報発信を実践しています。
おまけに、アメブロには「記事マッチ」のような芸能人ブログ向けの記事広告メニューもあり、いまや芸能人ブログ自体が一つの収入源の可能性として見えてきているのも事実。
アメブロのランキングの順位獲得自体が一つのテレビの番組の企画になってしまっていたりもしていますから、ある意味アシュトン・カッチャーのフォロワー獲得競争や、Twitterのテレビ番組連動みたいなものが、徐々にアメブロでも実施されていたりします。
Twitterが盛り上がっているからと言って、芸能人がいますぐTwitterに移るのは、実は結構ハードル高いんじゃないかと思うわけです。
で、今日の「Amebaなう」の発表になるわけですが。
shikeさんが「この発表のタイミングは、アメブロ芸能人Twitter流出へのをカウンターなのかな。」と言っていたので、なるほどなーと思ったのですが。
「Twitter流行ってるから、やった方が良いのかな」と浮き足立ち始めた芸能人を、
「アメブロでも、ちゃんと類似のサービスやりますから大丈夫ですよ」と引き留めるには、確かにこれで十分なように思います。
実際、すでに1割に当たる600人が参加表明をしているようですし、今回のリークで、さらに手を挙げる人は増えるでしょう。
日本のTwitter側も、当然芸能人のスカウトは強化してくるはずですから、どうなるかは分りませんが、現時点での利用者数とかいろいろ考えると、なかなか厳しい闘いになるはずです。
つまり、アメブロは、すでに「モバイル(ケータイユーザー)」と「芸能人(及びテレビ)」という、米国でTwitterが開拓した二つの分野を既に抑えているわけで。
グローバルで成功しているTwitterと、互角に戦いうる土俵にいるということもできるわけです。
まぁ、個人的にはTwitterユーザーなので、日本がマイクロブログでもガラパゴスにならないように、Twitterに頑張って欲しいですし。
「Amebaなう」というネーミングはいくら何でも無いだろとか(仮称なので変わると思いますが)。
Twitterのようにオープンに外部プレイヤーに公開してエコシステムを作るアプローチは取らないだろうAmebaで、総合的な使いやすさとか、コミュニティの盛り上がりは可能なのかとか。
実はTwitterのようなシステムは技術者にとって悪夢のような難しいシステムらしい(shikeさん経由モダシンさん談話)ので、本当に芸能人で大量にトラフィックが集まってしまった際に、サイバーエージェントさんの技術陣でしのぎきれるのかとか。
いろいろ疑問もありますし。
「Amebaなう」がどんな形のシステムとして出てくるのか。
単なるインスパイアなのか、二番煎じではない形になるのかも分りませんし。
そもそも本当に12月にリリースされるのかも、現時点では分らないわけですが。
この両社の闘いは、なかなか興味深いものになりそうな予感がします。
追伸
twitter night vol.3のセッション用に間違えて作ってしまったプレゼン資料ですが、いしたにさんとコグレさんのご厚意で「ネットPR大学「ツイッター 140文字が世界を変える」出版記念講座」でプレゼンさせて頂けることになりました。
プレゼン資料を既に公開してしまっていてネタバレしてしまってるので、今更プレゼンするのも恥ずかしいのですが。
メインプログラムで、Twitterを利用してる企業の事例とか、今回のツイッター本の裏話とかいろいろ聞けるみたいですので、ご興味のある方は是非どうぞ。
■お申し込みはこちら
ネットPR大学「ツイッター 140文字が世界を変える」出版記念講座
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