東日本大震災アーカイブ

【攻防 電力マネー3】地方は「交付金依存」 国、立地へ使途拡大

備品整備などに交付金が使われたビッグパレットふくしま。交付金の使い道は当初、産業振興などに限られた

 経済産業省資源エネルギー庁に、全国の自治体から問い合わせが相次ぐ。東京電力福島第一原発事故によって、電源三法交付金の見通しを懸念する声だ。
 同庁が試算したモデルケースによると、原発一基を新設した場合、自治体に交付される金額は、計画段階から運転期間を含めた合計45年間で約1215億円に上る。「制度が地域に深く組み込まれている」。電力基盤整備課長の佐藤悦緒(48)=伊達市出身=は問い合わせに込められた地方の切実な思いを実感している。

■願いは同じ
 電源三法交付金のうち、当初の「電源立地促進対策交付金」は、原発立地の市町村への交付を優先し、県は事実上、対象外だった。
 全国の立地県が反発した。制度開始から10年近くたった昭和56年、火力、水力も含めた発電量などに応じて金額を決める「電力移出県等交付金」が設けられ、ようやく県の事業にも交付金を充てられるようになった。
 県は、相馬工業団地の土地取得などの基金造成、双葉地方の住民定住に向けた計画づくりなど、浜通りを中心に交付金を使った。その後、県ハイテクプラザ(郡山)の研究機器の購入、浄土平レストハウス(福島)の改築、ビッグパレットふくしま(郡山)の大型プロジェクターの整備などに広げた。
 しかし、使い道は産業振興などに限られていた。交付の限度額もまだまだ低かった。
 「使い勝手をよくしてほしいという願いは県、市町村に共通していた」。かつて県企画調整部で事務を担当した元職員(72)=福島市=は指摘する。

■共存共栄
 昭和50年代、原発が立地する双葉郡で、交付金を元手にした体育館や文化施設などの「箱もの」建設が続いた。
 元職員はこの頃、県原町地方行政連絡室(現相双地方振興局)に務めた。双葉郡内の住民が町村の垣根を越えて利用できる体育施設の整備などを提案した。だが、それぞれの町村に交付金が入り、競うように施設を造ろうとする流れは変わらなかった。当時、「箱もの」の維持費や職員の人件費に交付金を使うことは認められなかった。
 元職員は、企画調整部に転勤すると、建設事業以外にも交付金を使いやすくすることや、交付金の増額を国に何度も働き掛けた。バブル崩壊に伴う県や市町村の税収減、医療・福祉・子育てなどの新たな課題に交付金を活用するためだった。
 平成15年度に使い道は施設の維持・管理や地域振興事業に広がった。元職員は「地域にとって本当にありがたかった。原発事故前までは、県と原発は『共存共栄』が前提だった」と語る。
 電源関係の交付金は地元の強い要望などに沿いながら、使途の拡大や増額が続いた。原発反対の広がりを懸念する国の地元対策の意味もあった。県や市町村、そして立地地域の住民は交付金の大きな恩恵を受けるにつれて、原発中心の地域づくりから抜け出せなくなった。
(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発