1年かけて世界周遊する方法

Alex MacCaw / 青木靖 訳
2011年12月29日

この前の記事で旅と執筆とプログラミングをして1年過ごしたことを書いたけど、今回は自分で世界一周旅行を計画するための具体的なこと、飛行機やコストや現地での活動や宿泊先といったことについて書こう。旅行には実際そんなにお金はかからないことと、自分の冒険をどう計画したらいいかを示せたらと思う。

旅というのは偏見や頑迷や偏狭には致命的だ ——マーク・トウェイン

シリコンバレーの「エコールーム」から抜けだして旅をし、違った視点を得るというのはすごく大切だと思う。旅をすることは人々が直面している本当の問題に目を開かせ、手近なありきたりのアイデアの代わりに、そのような問題の解決法を考え出す機会を与えてくれる。旅から新しい視点やアイデアを何も持たずに帰ってくることはないだろう。

Stuck in Customs

行く先を決める

行く場所を選ぶのに最初はまごつくかもしれない。特にその国のことをよく知らない場合には。僕の場合前の年に3ヶ月ほど南アフリカに滞在したので、旅のリズムに慣れるためこの馴染みのある場所からスタートすることにした。

その後に行く国々については、トレイ・ラトクリフのHDR写真ブログstuckincustoms.comを見て選んだ。この記事に入れている写真もみんなラトクリフの作品だ。この人は世界中を旅してすごい場所を訪れている。彼の足跡を辿って、とりわけ美しい場所を自分のリストに追加した。最終的にそのリストはこんな感じになった。

南アフリカ、香港、シンガポール、マレーシア、タイ、カンボジア、ベトナム、日本、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、ニューヨーク、サンフランシスコ、コスタリカ、パナマ、ペルー、ボリビア、アルゼンチン。

その1年でできるだけたくさんのところを見て、将来もう一度ちゃんと訪問し直そうというのが僕の狙いだった。あまり時間が取れないなら一カ所に集中することをおすすめする。アジアとか。僕が次にしたいと思っている旅はこんな感じだ。

北京から始め、列車でチベットへ、そしてネパールから陸路インドへと進む。ムンバイまで行ったら飛行機で東南アジアに飛び、タイ北部、カンボジア、ベトナム、ラオスと旅していく。

要は、どこに行くかは時間と予算と好みによるということだ。

Stuck in Customs

飛行機の手配

世界一周航空チケットのおかげで世界旅行は昔と比べてずっと簡単になった。祖父は女王の特使と一緒におんぼろ飛行機でブータンに行ったが、飛んでいる途中にエンジンを1つ失い、緊急不時着をした。あげくの果てには、最低限の修理の後同じ飛行機で旅行を続けますかと聞かれたそうだ! 時代のなんと変わったことか。

個々に便の予約をして柔軟度を最大限にすることもできるし、世界一周チケットですべてまとめて手配して安く上げることもできる。僕は後者を選んだ。必要になる便の数を考えると個別に買うのは経済的に無理があった。

世界一周チケットの値段は米ドルで3千から7千5百ドルくらいになる。僕は16の便を7千ドルで予約したけど、値段は旅行の時期や出発地と目的地によって大きく変わる。コツは旅行の最初と最後の地にあまり裕福でない国を選ぶということで、そうするとたいていチケットが随分安くなる。

僕はチケットにワンワールド使ったけど、とても満足している。これはアメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、日本航空、キャセイパシフィック航空といった航空会社のコングロマリットで、便利なオンライン予約システムがある。自分で手配できるのに旅行代理店に手数料を払うことはない。ワンワールドの利点の1つは無料で便の日時を変えられることだ。行き先の変更は無料ではないので、はじめから正しく選ぶようにしよう。

世界一周チケットにはいろいろ制約があり、航空会社によって違っている。飛べるマイル数を制限しているところもあれば、便の数を制限しているところもある。多くの場合、1つの大陸への出入りは1回ずつで、一方向に飛ぶこと(常に東にとか)を要求している。それぞれの場所に少なくとも2週間滞在する必要があり、チケットは1年過ぎると期限切れになる。そういった制限があるのは通勤みたいなことに使われたくないためだ。チケットを買うときにはこのことを念頭に置いておこう。

大陸間の便を使って長距離の移動をして、それから必要に応じて大陸内の短距離便を予約するようにするといい。アジアや南アメリカは飛行機がなくとも楽にどこへでも行ける。バスや列車を使うのもいいし、車を買うかヒッチハイクしてもいい。飛行機での移動はできるだけ減らして、代わりに地上を移動することを強くおすすめする。そうした方がずっと多くのことを体験できる。

Stuck in Customs

荷造り

荷物は可能な限り軽くしよう。すべてを背負うことになるのだから。これはセキュリティという観点からも重要だ。荷物が多くなるほど気を使うことが増える。

僕は90リットルのリュックサックをeBayで買って一週間分の衣類とタオルとカメラ一式を入れた。マレーシアで三脚とウェットスーツは送り返した。それ以上持って行くには重くて嵩張りすぎたので。持ってこなかったけれど必要なことに気づいたものは現地で買うことができる。そういうミニマリストのライフスタイルが身についたのは、旅の大きな恩恵のひとつだ。

予算と宿泊

宿泊は簡単だ。とくにアジアの物価の安い地域を旅している場合には。予算が限られていたので、たいていホステルを使った。アジアや南アメリカでは奇妙なホテルにも泊まったが。いいホステルを見つけるのは難しくないし、ネットで調べられるならなおのことそうだ。Hostel Worldを出発点として、Lonely PlanetWikitravelを参考にするといい。ニュージーランドのような場所は旅行者にとても便利にできている一方、ハワイや日本などはもう少し面倒かもしれない。

ホステルは人との出会いがあり、どこに行くかアドバイスをもらえる点でも優れている。興味深い人々をいつも見つけることだろう。半導体チップ設計者やプロのダイバー、量子暗号の専門家なんかにも出会った。旅の道連れを見つけ、生涯続くであろう友達もできた。旅行の楽しみの半分はここにあると言っていい。

総予算として、宿泊と食事を含め1年間で1万5千ドルくらいを見込んでいたが、この数字はほぼ妥当だったことがわかった。それにそんなつましい生活をしていたわけでもなく、毎晩地元のレストランに食べに行っていた。それでも心の平安のため、銀行口座に余裕を持たせておくのはいい考えだ。

Stuck in Customs

現金と電子機器

僕が行った国はどこも手近なところにATMがあり、現金について困ることはなかった。もっとも僕の銀行カードは不正利用を疑われて3度使用停止になった。そういう問題が起きないよう、旅の計画について銀行に伝えておくといいかもしれない。クレジットカードを何枚か持って行き、大事を取って別々な場所に入れるようにしよう。それと国際取引に課金しないカードを見つけるといい。嵩むと結構な額になる。カードが使えない場所も多いので、現金はいつも必要になるだろう。

丸1年携帯電話は持たず、代わりにiPod touchとSkypeを使っていた。これは見た目ほどクレージーなことでもなく、切り離されていることをむしろ気持ちよく感じた。みんな連絡してくるのはこちらの選んだ時間にだけだ。携帯を持っていくなら国際プランに入って注意を怠らないようにしよう。とんでもない額になりかねない。

僕はNikonの一眼レフとMacbookと、その他もろもろの電子機器をどこにでも持って行った。率直に言って世界はある人たちが考えているような未開の地ではない。ただ常識を持って、物をいつも身近に置いておくようにすればいい。僕が幸運だっただけかもしれないが、この旅の途中で盗難に遭うことは一度もなかった。

コンセントはちょっと調べる必要がある。アジアの国は概ね似た形のコンセントを使っているが、時折変なのがある。それから南米のコンセントにはアースがないので、3本足のアメリカのプラグはそのままでは刺さらない。グローバルアダプタを買っておくのは割に合うだろう。

WiFiは実質どこにでもある (ベトナムのインターネットはアメリカのよりも快適に感じることが良くあった)。見つけるのに苦労したのはアフリカの僻地くらいだった。特に僻地に行く予定があるのなら、3Gデータ端末に投資しようと思うかもしれない。地元で買うのが通常一番安く付く。

Stuck in Customs

アクティビティと計画

何をするにせよ、パッケージは避けること。僕は飛行機が着く都市での最初の2晩を予約するだけで、後は行ってから考えた。最初の晩の予約もせずに現地入りすることもあった。計画には自由を持たせておいて、細部まで事細かに決めようとはしないことだ。現地に行って他の旅行者からアドバイスを聞いたら計画はどのみち変えることになる。柔軟性を持って適応するようにしよう。

個人的にはガイドブックは使わないが、定番のガイドブックはLonely Planetだろう。これは行った先の国で買うといい。地元や空港で買うと余計に払うことになる。

WikiTravelは素晴らしい情報源で、僕は毎日使っていた。しかし何といっても最良の情報源は仲間の旅行者や地元の人のアドバイスだ。僕はもらったアドバイスをみんな小さな黒いノートに書き付けていた。アドバイスは今いる国の中のことに限らない。アルゼンチン人の男が僕の本に南アメリカの地図を画いて、ペルーとチリのおすすめの場所を書き込んでくれたのをよく覚えている。

Stuck in Customs

旅の仲間

誰かと一緒に行くかどうかは自分次第だ。僕の場合1人で旅をして、積極的に人に会い、友達を作るのがすきだ。誰かと一緒に旅をするなら、いい友達にすることだ。長い間一緒に旅していると不満がたまるものだ。

ビザ

幸いにしてアメリカやヨーロッパの市民権を持っているなら、ビザは問題にならないだろう。国境でビザをもらえなかった唯一の国はベトナムだったが、カンボジアのホステルである男に金を払ってベトナム大使館でビザの手配をしてもらった。この辺のことについてはあらかじめ調べておく価値はあると思うが、通常は問題にならない。

健康保険

健康保険にはWorld Nomadsを使った。ごく低価格で頼りにできるオプションがある。

とは言え、単に幸運で馬鹿なことをしなかったというだけのことかもしれない。アフリカの僻地で緊急事態に陥ったときに助けてくれる保険はどこにもない。

ライフスタイル

通常僕は1つの場所に少なくとも数日から1週間いて、それから先に進むが、長いこと移動した後は、少し腰を落ち着けるのもいい。そうしたいと思ったときはいつも数週間1つの場所に滞在していた。たとえば本を少し書き進める必要があったときにホーチミンで2週間過ごした。

運動のため、サーフィンをしない日は浜辺を少なくとも30分走っていた。健康のために時間を割けるというのも旅の大きな利点の1つだろう。毎日サーフィンやジョギングをするのを何ヶ月も続けていたら、かつてなく良い健康状態になっていた。

僕は知的な刺激も必要としており、を書くというのがそのために取った方法だった。そうしていなかったとしたら、読書やプログラミングをして心を満たす必要があっただろう。心の知的なバランスを保つのは重要で、長期間旅をする場合は特にそうだ。

本を書き終えると、オープンソースプロジェクトのハックをし始め、Spineを作った。実際最初のバージョンはニュージーランドで長時間バスに乗っている間に書いたのだった。どこにいようとイヤホンを付ければ気が散るものを消し去って集中できるのは驚くほどだ。

新しい町に行くときはいつも、数日前にRubyのメーリングリストに投稿して誰か会おうという人がいないか探した。たいていはうまくいって、おしゃべりやアドバイスをしてくれる人を見つけられた。東京と香港では講演をし、シドニーとケープタウンでは地元のRubyチームと食事をした。

プログラミングコミュニティというのは新しい町で即座に繋がりや基地を提供してくれる、ものすごいリソースだと思う。

体験

世界旅行をすると、そんなことできるとは思わなかったほど多くのものを見、体験することができる。マレーシアの聞いたこともない美味な果物から、食べたことのないような最高のアルゼンチンのステーキまで、王であるかのように食する。ニュージーランドの山に登り、ペルーの渓谷を下る。ものすごいコスタリカの夜明けにサーフィンをし、明日がないかのようにパーティをする。驚くばかりの人々に出会い、人生を変える経験をする。

まったくのところ、世界旅行をするという決断は、あなたが今後するすべての決断の中で最善のものになるだろう。

Stuck in Customs

コスト

旅行の総コストは2万2千ドルだった。その大部分は旅行前にしたひと月のコンサル仕事で賄えた。ひと月のコンサル仕事の見返りに1年間旅行ができるなんてクレージーに思える。そして予算を特に抑えたわけでもなかった。同じことをずっと安くやっている人たちにたくさん出会った。意志のあるところ道は開けるのだ。

これをいっそライフスタイルにして、旅をしながら賄うことだってできる。プログラマであれば、1年の一部にせよ、遠隔で仕事することができる。クライアントは仕事が成し遂げられさえすれば、こちらがどこにいようが気にかけない。そういう位置に自分を置くためのプロセスは成功するコントラクタになるのと一緒だ。鍛錬とネットワーキング。

もうひとつ考えるべきことがあるとしたら、いつか時間切れになるということだ。年を取るにつれて縛られる重荷は増えていき、こういったことをするのが難しくなる。人生をお金ではなく体験に向けて最適化する必要がある。

モチベーションは、望む気持ちの増加と実現性の増加の2つから構成されている。言い換えると、動機付けするためには何かをする望みを強くし、それを達することの現実性も強くするということだ。今回の2つの記事でその両方ができたことを望んでいる。旅するプログラマがもっと増えれば素晴らしいと思う。

Stuck in Customs

 

home  rss  

オリジナル: How to travel around the world for a year.