Google Fast Flip は効率的な情報収集か、否か?

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朝起きて、普段通りに新聞をめくる…ようなことがなくなって、もうどのくらいになるのか。我が家では新聞勧誘が来ても決まり文句は「うちは新聞を取らない家なんです」となっています。すべてのニュースはオンラインでなければ、そもそも目を通さないようにしているからです。

なので Google 発表した新しいニュースの読み方、Google Fast Clip の出現にはちょっと複雑な思いです。まるで新聞のようだからです。

Google Fast Flip にアクセスするとわかりますが、これはニュースサイトの新しい記事のスクリーンキャプチャをとったもので、レンダリングの時間がない分だけ高速に表示し、ニュースを読んでゆくことができるサイトです。

操作方法は Google Reader のようにキーボードの j/k (いわゆる vi ボタンですね)、あるいは n/p (next / previous)で記事をサクサクと読んでゆき、もっと読みたい記事があったら Enter を押せば元サイトで開いてくれます。

Google News を見て回るよりも、たしかに高速にニュースを読んで消化してゆくことができます。ブラウザでも、iPhone でも、左右にページがフリックされてゆくのをみるのは驚きの光景です。しかしなんだか違和感が…と思ったところで新聞のことを思い出したのです。

今のところ、**Google FastClip は「次にフリップする記事」が自分に興味があるものかどうか選ぶことができません。**サクサクみられるので大量のニュースを消化した気になりますが、大量のゴミ情報に目を通している可能性だってあります。それはまるで、新聞を読んでいて、めくった先のニュースを選べないのと同じなのです。

Google Fast Clip の記事検索がまだ完全ではないのも気になります。たとえばこのブログのテーマの一つである「生産性」Productivity について検索しても経済指標のニュースが入ってくるばかりです。もっとニュースソースが加われば検索に引っかかってくる記事も増えるのだと思いますが、でもそれは「利用できる情報 vs 自分にとって必要ない情報」の S/N 比をノイズの側に傾ける諸刃の剣でもあります。

このあたり、Guy Kawasaki の Alltops のような、カテゴリ分けされたニュースソースの方が泥臭くみえますが、投入される時間に対して得られるニュースは多くなります。

もちろん Google FastFlip はまだ Labs で試されている試験的なサービスですので、今後も注目していきますが、新しい情報入手方法が必ずしも進歩しているわけではない、とことに注意しながら見守りたいと思ってます。

p.s.

ところでニュースサイトにとってこれは自殺行為なのではないかというのも心配です。ほとんどのコンテンツは Enter を押されることもなく、つまり元サイトにトラフィックが行く前に消費されてしまうので、ニュースサイトのビジネスモデル的に大丈夫なのだろうかと…。

このあたり、Paul Bradshaw が興味深い論説を提示しています。「Google Fast Flip はニュースサイトに対する残酷なジョークのようなもの」。興味があったらご覧ください。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。