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ASU研究者、世界初の白色レーザを実証

August, 3, 2015, Tempe--白色レーザは、LEDよりも明るくエネルギー効率がよいことから、照明、ワイヤレス光通信で将来性が見込まれている。
 アリゾナ州立大学(Arizona State University)の研究チームは、白色光を発するレーザを実現した。半導体レーザが、白色レーザ実現に必要な可視のフルスペクトルを発することができる。
 研究チームは、3つのパラレルセグメントで新しいナノシートを作製した。3つの各々が、原色の1つでレーザ発振をサポートしている。デバイスは、赤、緑から青、それらの間のどんな色にも可変で、どんな可視光でも発振することができ、全域をまとめると白色が発生する。
 技術的進歩によりレーザは、主流の光源に、LEDに取って代わる、代替となる可能性のある光源に一歩近づいた。レーザの方が高輝度であり、エネルギー効率が優れており、より正確で鮮明な色をコンピュータスクリーンやTVディスプレイに提供できる可能性がある。研究グループは、新開発の構造が現在の業界標準ディスプレイよりも70%多くの色が出せることをすでに示している。
 もう1つ重要なアプリケーションは、将来の可視光通信。部屋の同じ照明システムが照明と通信の両方で使える。開発中の技術は、光ベースのワイヤレス通信Li-Fiと言う。Li-Fiは、現在のWi-Fiよりも10倍以上高速であり、白色レーザLi-Fiは現在まだ開発中のLEDベースのLi-Fiよりも10~100倍高速になる。
 「白色レーザという考えは最初は直観に反するように思えた。一般的なレーザは正確に1つの色、電磁スペクトルの特定波長を含んでおり、広帯域の多様な波長ではない。白色は一般に、可視スペクトラム波長の全ての完全混合である」と電気、コンピュータ、エネルギー工学教授、Cun-Zheng Ning氏は説明している。
 一般的なLEDベース光源では、青色LEDを燐光材料でコーティングして青色光の一部を緑、黄色、赤色光に変換している。この色混合の光が人の目には白色と認識され、一般照明に使用される。
 2011年サンディア国立研究所(Sandia National Labs)は、4個の個別レーザから高品質の白色光を作り出した。同研究チームは、人の目はLED発光と同様に、ダイオードレーザ発光の白色光にも心地よく感じることを示し、他の研究者にもレーザ技術の開発を促している。
 Ning氏は、「独立のレーザは室内照明やディスプレイで使うことはできないので、この概念実証は素晴らしい」と語っている。「全ての色を発光する、あるいは白色で発光する1個の小さな半導体材料が望ましい」。
 半導体は、通常結晶配列の固体化学元素、化合物であり、コンピュータチップや通信システムの光源に広く用いられている。光学特性は興味深いものがあり、電圧を印加すると発光する。特定の色を発するので、それを使用してレーザやLEDを造る。最も好まれる半導体発光材料はInGaN。ただ、硫化カドミウムやセレン化カドミウムなど他の材料も可視光用に使用されている。
 研究チームによると、主要な課題は、発光半導体材料の成長の仕方、どのようにして違う色で発光させるかと言う点。一般に、所定の半導体が、青、緑あるいは赤など単色の光を発するが、これは固有の原子構造、エネルギーバンドギャップによって決まる。
 「格子定数」は、原子間の距離を示している。可視光スペクトルの可能な全ての波長を作るには、違いが大きな格子定数とエネルギーバンドギャップの複数の半導体が必要になる。
 「われわれの目標は、3つの基本レーザ色で発振可能な単一の半導体を実現することだ。そのような半導体は小さく、3つの別の色ではなく、全ての色が1つに混合されていると感じることができる。しかし、それは簡単ではなかった」と院生Fan氏は言う。
 「重要な障害はいわゆる格子不整合、つまり必要とされる多様な材料で格子定数があまりにも違いすぎることだ。従来の技術を使って、異なる半導体結晶を高品質に成長することはできなかった」とZhicheng Liu氏は言う。
 ナノメートルスケールでは、大きな不整合であっても、バルク材料で従来の成長技術を使う場合よりも、トレランスが優れているということである。高品質の結晶は、異なる格子定数のミスマッチが大きくても高品質の結晶が成長できる。
 6年前、米国陸軍研究所(U.S. Army Research Office)の助成金を得て、研究チームは1㎝長の単一基板で赤から緑まで可変できるように、幅広いエネルギーバンドギャップでナノワイヤ成長が可能なことを実証した。その後、単一の半導体ナノシート、ナノワイヤで緑と赤の同時レーザ発振を実現した。
 白色を作るのに必要な青色は、このようにエネルギーバンドギャップが大きく、材料特性が非常に違っていては極めて難しいことが分かっていた。
 2年の研究の末に研究グループは材料を適切なアロイ成分に変換し、青色を発光させる方策を見いだした。「われわれ独自の成長法は、二重イオン交換プロセスという興味深い成長プロセスの最初の実証である」と院生Sunay Turkdogan氏は説明している。
 構造的な形状と成分を分離するこの方法は、戦略の大きな変更であり、重要なブレイクスルーである。これによってついに、全ての必要な色、つまり白色レーザを発する3つの異なる半導体セグメントを含む1つの構造を成長させることが可能になった。「形状と組成が同時に達成されるような一般的な材料成長では、こういう事はあり得ない」とTurkdogan氏は言う。
 この最初の概念実証は重要であるが、そのような白色レーザを実際の照明あるいはディスプレイアプリケーションに適用するには大きな障害が残っている。次の重大な局面の1つは、バッテリ駆動でその同じ白色レーザを実現することである。現在のデモでは、研究チームはレーザ光を使って電子を励起し発光させなければならなかった。この実験成果は、重要な最初の材料要件を示しており、最終的な電気駆動の白色レーザの基礎になる。