東急とLINE Payは、券売機を使った現金チャージ機能の提供を開始した。
撮影:小林優多郎
東急とLINE Payは7月15日から、東急線各駅の券売機においてLINE Payへの現金チャージを開始した。
1回あたりのチャージ金額は1000円〜4万9000円で、手数料は無料。一部の駅を除く東急線の324台の券売機において、毎日5時30分から23時までの間に利用できる。
また、サービス開始記念のキャンペーンも実施。7月15日から7月30日までに東急の券売機から1度に3000円以上のチャージをしたユーザー先着2万名に対し、LINEポイント300ポイントを付与する。
LINE Payの“前払い派”ユーザーの利便性が向上
LINE Payの残高チャージの選択肢。東急の券売機を使う場合は右下のアイコンをタップする。
撮影:小林優多郎
利用手順はシンプル。対応する券売機に表示される「QRコード バーコードを使う」のボタンをタップして表示されるQRコードを、LINEアプリのLINE Pay入金ボタンから「東急線券売機」を選び読み取るだけ。
チャージ結果は即時反映され、「LINEウォレット」アカウントから通知が届く。チャージされた残高は、実店舗およびネット上のLINE Pay加盟店、請求書払いでの利用やLINEでつながった友だちに送金することも可能だ。
券売機とLINEアプリの操作後、スマートフォンで券売機のQRコードを読み取る。
撮影:小林優多郎
今回のプロジェクトを担当したLINE Payの藤平賢人氏は開発の理由を「駅という生活に密着した場所でチャージできるようになる。沿線で生活するユーザーの利便性向上が狙い」と話している。
LINEは現在、自社とVisa、三井住友カードで共同開発したクレジットカード「Visa LINE Payカード」のプロモーションに力を入れており、利用額に応じたポイントバックも残高からの支払いでは対象外となっている。
そんな中でLINE Payが残高チャージの手段を増やす意図として、LINE Pay広報は「紐づけられる銀行口座を持っていない方、毎月の利用をセーブできるプリペイド(前払い)式を支持するユーザーも一定数いるため」と語る。
また、LINE Pay残高からの支払い時でも、同社が5月から始めている「LINEポイントクラブ」の特典クーポンが利用できるため、対象となる店は限定されるが「残高利用の方もおトクにご利用いただける」(LINE Pay広報)としている。
東急は“駅の付加価値向上”と“PASMOのおつりの確保”が狙い
東急 フューチャー・デザイン・ラボ 事業創造担当のプロジェクトリーダー 八巻善行氏。
撮影:小林優多郎
LINE Pay側の狙いはユーザーの利便性向上だが、現実世界のタッチポイントを担う東急側の狙いは何だろうか。
例えば、同じ鉄道事業者のJR東日本の場合は、モバイルSuicaの機能や連携する事業者の拡充によって、駅の券売機を減らし、メンテナンスコストなどを削減する方針をとっている。
東急のフューチャー・デザイン・ラボで事業創造担当のプロジェクトリーダーを務める八巻善行氏はモバイルへの投資、キャッシュレス化の流れは汲みながらも、残った券売機を有効活用していく意図を語った。
「現金が流通している限り、(券売機を)ゼロにはすることはできない。キャッシュレスが進んでいったとしても、公共性の高い事業である鉄道事業者では、予備を含めて1駅に2台の設置が必要だ。
券売機があり続けるのであれば、それを有効利用し、駅の付加価値を上げていきたい」(八巻氏)
東急は2019年5月にも、ゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」と横浜銀行の「はまPay」と連携し、各アプリを利用したキャッシュアウト(出金)の仕組みを提供しており、券売機の多機能化に取り組んでいる。
PASMOへのチャージとは異なり、LINE Payへのチャージではおつりが発生しない。
撮影:小林優多郎
また、今回のLINE Payとの現金チャージ機能の取り組みに対し東急は「おつりの確保」という面にも期待を寄せているという。
東急広報によると、東急線の改札においてPASMOなどの交通系ICの利用率は約95%で、券売機でチャージを行なうユーザーも多くいるという。
交通系ICカードへのチャージは、ユーザーが金額を指定する仕組みのため、例えば「1万円札を入れて3000円チャージをする」といったような人もいる。その場合、おつりとなる紙幣の確保が必要になってくる。
そのため、LINE Payへのチャージは「紙幣を挿入した分だけチャージできる」という仕組みをとっている。交通系ICカードのようにおつりは発生せず、硬貨を入れることもできない。
八巻氏はLINE Payへのチャージのサービスについては「全線で1日500件の利用が目標」と語っている。また、システム上はLINE Pay以外のキャッシュレス事業者とも接続可能で、ソフトウェア的な更新さえすれば有効にできるため、「ご縁があれば取り組んでいきたい」(同氏)と語っている。
(文、撮影・小林優多郎)