泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

トヨタのMaaS戦略、世界での現在地はどこか テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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「MaaS(マース)」という言葉をお聞きになった方はどれくらいいらっしゃるであろうか。最近、自動車業界では、このMaaSというキーワードに注目が集まっており、トヨタ自動車もMaaS戦略へ本格的に取り組んでいる。今回はトヨタがMaaSで何を目指すのかについてまとめたい。

MaaSとは移動手段をサービスとして提供すること

初めにMaaSの意味とその言葉が生まれてきた背景を説明しよう。MaaSとは「Mobility as a Service(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の略語であり、直訳では「サービスとしての移動性」を意味する。ただ、これではイメージがわきにくいかもしれない。さらにかみ砕くと、サービスを提供する側から言えば、移動手段を「(モノではなく)サービスとして提供する」ということを示し、サービスを利用する側から言えば、移動手段を「(モノではなく)サービスとして提供してもらう」ということを指す。

なぜ、MaaSというすぐわからない表現が生まれたのであろうか。これは、ICT(情報通信技術)業界で、サーバーというコンピューターを、1台何円といったモノではなく、使用するストレージ容量や1カ月何円といったサービスとして提供するクラウドサービス事業が盛んになったことが背景にある。サービスとして提供するサーバーコンピューターやソフトウエアの種類によって、ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS:サース)、プラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS:パース)、インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス(IaaS:イアース)などと呼ばれる。

自動車業界でMaaSという言葉が生まれたのは、まさにICT業界と同じような変化が自動車の購入者や利用者に起きているということと、大きな関係がある。

自動車メーカーは、自動車を生産・販売することが主な事業領域であるが、今の若い世代では、自動車に対するニーズが「所有」から「利用」へシフトしつつある。「自動車離れが進んでいる」という指摘を耳にする人も多いのではないだろうか。

そうした環境下では、自動車というモノを販売するのではなく、自動車による移動サービスを提供する環境を整えなければ長期的に収益を高められないという問題意識がある。

それは自動車メーカーとして世界を代表するトヨタも例外ではない。続いて、トヨタがどのようなMaaS戦略を推進しているのかについてみていこう。

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