CHANGE / SUSTAINABILITY

写真家・真鍋奈央 ── 100年の時を経て生まれた「人工の森」。【そこにある自然 vol.4】

人工的に作られた自然。その表現は確かに矛盾している。だが、明治神宮の杜には、その違和感を凌駕する圧倒的な人為的自然美が存在している。昨年末、写真家・真鍋奈央は明治神宮鎮座100年の節目を前に、人々が大切に守ってきた「永遠の杜」の今を切り撮った。
写真家・真鍋奈央 ── 100年の時を経て生まれた「人工の森」。【そこにある自然 vol.4】
都会の「人工の森」で自然と人為について考える。

1人当たりの最大限利用可能な水資源は3400㎥
内閣官房による2019年の水循環白書では、日本は世界の1.6倍もの年平均降水総量を誇り、水資源に恵まれている印象。しかし人口が多いため、1人当たりの理論上最大限利用可能な水資源は年3400㎥。世界平均の1/2以下だ。さらに近年の台風被害からもわかるとおり、地球温暖化の影響で降水パターンが極度に変動する今、これまで以上に水資源を大切に利用する必要があるのだ。


かつて暮らしたハワイで、人々が時に脅威ともなる自然に晒されながらもそれを受け入れ、畏怖しながら生きている姿に感銘を受けたという真鍋奈央。対して今回、彼女が撮影場所に選んだ明治神宮内苑の杜は、約100年前に人々が「永遠の杜」を目指して人為的につくった森だ。

 「『人工の森』には、そもそも語義矛盾があるかもしれません。でも、ここでは植物が自生し、自らの力で続いていくように設計されていることに何より感動します。私たち人間は、とかくコントロールしたくなる生き物ですが、すべてが自然淘汰に委ねられている。東京の真ん中でそれを感じられる場所があるって、やっぱりすごい」  そう話しながら、真鍋は観光客の多い南側ではなく、北側を選んで歩いていく。彼女が切り取った北池の水面に映る森の倒景は、吸い込まれるような美しさだ。

Profile
真鍋奈央/Nao Manabe
1987年徳島県生まれ。中学を卒業後に単身渡米し、ハワイ州の高校を卒業。ハワイの人々や自然を13年間にわたり記録した100枚組の写真で、2018年に入江泰吉記念写真賞を受賞。翌年、写真集『波を綴る』を発表。 

Photos: Nao Manabe Editors: Maya Nago, Airi Nakano