波状雲

山脈や島などの風下に等間隔に並んだ雲域を「波状雲」と呼ぶ。図1では奥羽山脈に並行な積雲や層積雲などの雲列が等間隔に発生している。このように山脈のような細長い障害物の場合は、風下側に山脈に平行な走向を持つ。

波状雲の発生について次の五つの条件が挙げられている。

  1. 風向は上層まで厚い層にわたってほぼ一定であり、障害物の走向にほぼ直交している
  2. 上層までのかなり厚い層にわたって絶対安定である
  3. 雲を形成するのに十分な水蒸気が存在する
  4. 山頂付近でおよそ10m/s以上の風速がある
  5. スコーラー数が減少する成層の中で発達する

図2は、波状雲発生当時の秋田の温位エマグラムである。エマグラムから、次の特徴が見られる。

  1. 風向は上層まで厚い層にわたって西北西でほぼ一定であり、奥羽山脈の走向にほぼ直交している。
  2. 相当温位から 700hPa 付近まで中立で、その上は対流安定である。また、静力学的にもほぼ安定している。
  3. 925~700hPa は湿度が 80%以上で湿っており、下層雲を形成するのに十分な水蒸気が存在する。
  4. 奥羽山脈の標高は 1500~2000m 程度で、この高さに対応する風速は、850hPa で 14m/s、800hPa で 17m/s
  5. である。
  6. 下層から上層へ風速が増していることから、上層へ向けスコーラー数が減少している。

波状雲が存在する場合は、山岳波による乱気流の可能性が考えられる。山岳波に伴う乱気流の発生には、山頂付近での逆転層高度・鉛直安定度・山の形など風速以外の要素も関わってくるので、衛星画像で観測された波状雲の存在が乱気流に直接結びつくわけではないが、乱気流発生のポテンシャルとして利用することができる。 なお、風下波は、山の上流側へも伝播するため、波状雲は風下側ばかりでなく、若干風上側にも発生する場合がある。

Natural Color RGB Natural Color RGB 2016年4月30日 00~06UTC
温位エマグラム 図2 温位エマグラム(秋田、2016年4月30日00UTC)緑:温位、赤:相当温位、ピンク:飽和相当温位