新フレーバー”Atman”詳細

前略。

今回の記事(特に前置き)は長くなります。

普段私がどうやってレシピを考えているかというと、まず軸となる香料を2~3種類選びます。これをメインに肉付けしていく形です。

ミストのトップノート(吐き始め)からラストノート(吐き終わり)までの香りの出方を、香料のエタノール含有量を見ながら構成していきます。エタノールが多く含まれていると香りが揮発しやすくトップノートに強く出て、逆に少なければどっしりとラストノートに居座ります。エタノール含有量は香料メーカーのMSDSを参照しても良いですし、香料ボトルを振るだけでもわかります。エタノールが多い香料はサラサラしています(例:FLVエルダーフラワーなど)。少ない香料はやや粘度が高いです(例:FLVレッドバーレーなど)。

軸となる香料は基本的にトップノートに出やすいのでレシピに時間をかけるのはほとんどラストノートの部分ですが、何度もレシピを作っていると段々と香料同士の相性が理解できるようになります。また香料メーカーによっても濃度やクセが違うのでどのメーカーの香料をどれぐらい使うか、経験によって引き出しの量が多くなります。

トップノート、(ミドルノート、)ラストノートを構成し、一通りレシピを完成させて、リキッド完成までの進捗率はようやく30%になります。ここまでは論理的なアプローチでしたが、ここからはかなり直感的な方法です。

実は、BaksLiquidLab.のリキッドは私一人で完成させているものではありません。私だけではなく、もう一人の私がいます。

「お、クスリか?ガンギマリ™か?」とか言わないでください。シラフです。

もう一人の私というのは、レシピの数字と電子スケールと香料ボトルの山を前にウンウン唸っている私ではなく、それ以外の無意識の私です。

運転中やYouTube視聴中にアホ面でVAPEを吹かす何にも考えていない私。彼こそがレシピ作成者である私の上司です。

彼のGOが出ない限り、リキッドが完成することはありません。

どれだけ経験を積んで香料の特性を把握し、数多の試作を経て理論的に完成させたリキッドでも、YouTube見ながら無意識にそれを吸っている時に「なんか違う」という感覚が沸き上がってきたらボツになります。

レシピ担当の私はすごすご追い返され、次はその「なんか違う」原因を探す作業に入ります。レシピの濃度は適正か?香料の種類が多かったのか?少なかったのか?この作業につき、また新たに配合を変えた試作を10種類ほど作成し、その中でも特に優れたものを上司に渡します。そして彼はアホ面で吸い始め、また「なんか違う」と宣うのです。

────────────────────────

どうして理論と直感を混同させるプロセスを踏むのか。

それは「直感的(無意識的)に美味しい」と思えるフレーバーこそがBaksLiquidlab.のリキッドであるという理念があり、その直感に最短でたどり着くのは理論に他ならないからです。

どれだけ時間を掛け高級な香料をふんだんに使って練り上げたレシピでも、美味しくなかったりすぐに飽きてしまうようなフレーバーだとしたら意味がありません。そんなもの初めから作らないほうがマシです。

消費する側にとっては製作者の理論なんてハナクソほどの価値もありません。美味けりゃ正義、勝てば官軍です。

なので理論が先行し過ぎないよう、無意識の私がそれを抑制します。つまるところ、無意識の私というのはBaksLiquidlab.の疑似的な消費者、お客様そのものなのです。

────────────────────────────

前置きおわり。

Atman(アートマン)、サンスクリット語で生命、自己、身体、自我という意味があるそうですが、本来は「呼吸」という意味だそうです(ウィキ参照)。

前作Potter、前々作SabatoではBaksLiquidlab.の幅を広げる為に新しくカクテル系、デザート系を開発しておりましたが、ここで一度また「BaksLiquidlab.らしさ」に回帰します。

チャイのフレーバーをメインにクローブ、カルダモン、そしてエスニックな香りを増強させるフレーバーを数種類プラスし、後味が軽くなりすぎないように葉巻香料を数種類ブレンドしたアロマ全振りのフレーバーです。VGPG配合は50:50です。

BaksLiquidlab.リキッドの中で最多の11種類の香料がブレンドされていますが、全体のフレーバー濃度としては低めです。

販売する立場として一応はチャイ葉巻フレーバーであると定義させて頂きますが、香料の種類が多くそれぞれのフレーバー濃度が低いが故に実際吸えば吸うほど一体何味なのかわからなくなります。わからないが故に繰り返し吸うことになるので、あえて薄めに仕上げています。

「何味かわからない」「定義できない」というのはマイナス要素でもあります。理解を超えた前衛芸術や異国の郷土料理を目の前にしたとき、人は「評価する」という事を投げ出します。

消費する側に再定義を迫るというのは作り手側のエゴに他なりませんが、どうかその壁を乗り越え、Atmanが皆さんそれぞれの呼吸に馴染んでいってほしいと願っています。むしろ評価なんて要らないから、よくわからないものをよくわからないまま受け入れて欲しい。俺たちはいつだってそうして来ただろ?(何言ってんだ?)

先日公式ツイッターにてフレーバーナビゲート図↓↓なんてものを貼りましたが、

Atmanはココ↓↓に入ります。

グリセリン由来の若干の甘味はありますが、それでも歴代フレーバーの中では一番甘さは控えめです。スパイス系が多種入っているので少しピリッとします。しつこくないのでチェーンスモークしてもウェッとなりません。謎味で定義できないけど、定義できないが故に飽きが来ず、季節を問わず吸って頂けます。

正直、サンプル試飲の2、3パフの時点で「あ、コレはあんまり好きじゃないな」と離れる人多いんだろうな~と思います。どうかお願い、あと30パフぐらい吸ってみて。自然に馴染んでくるはずなので。エゴだよこれは!

────────────────────────────

販売情報です。

8/11(水・祝日)AM0:00より全国の代理店様より販売開始となります。

本家ウェブストアでは恐らくその1週間後ぐらいに販売開始する予定ですが、ワクチン接種もそのあたりなので多少前後するかもしれません。

久しぶりのエゴまみれのリキッド、是非楽しんで頂ければ幸いです。