アメリカ国民の「原点回帰」!?
アメリカ大統領選で共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏。米政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各種世論調査の平均支持率(5月22日時点)では、トランプ氏(43・4%)が民主党のヒラリー・クリントン氏(43・2%)をついに上回った。
さらに、共和党の事実上のリーダーであるライアン下院議長が2日にトランプ氏支持を表明するなど、トランプ氏は本選に向けて弾みをつけている。
当初の泡沫候補扱いからすると、目を疑うような展開である。
黒人など人種的マイノリティや女性の投票行動の予測から、本選でのクリントン氏優位は動かないと見る専門家が多いものの、こうした見立てがことごとく外れているのが今回の大統領選だ。
アメリカ社会の動向は、大手メデイアを含むあらゆる「エスタブリュシュメント的存在」への反乱のように映る。
筆者は新聞社のワシントン特派員として2005年から3年間、アメリカの政治・外交をカバーした。その経験から、今回の大統領選は、民主党支持者が多い非白人人口の急増という人口動態的な分析を越えたところで進んでいるように思えてならない。
トランプ氏が、旧来の共和党支持者以外の票を掘り起こし、多くの有権者を引きつけていることはその証左ではないだろうか。
背景には、「アリカ人とは何者か」と問う有権者の原点回帰があるように思える。建国以来、世界各地から移民を引きつけながら形成されてきた、将来の夢と楽観主義を大切にするアメリカ人気質。そのDNAが、支持者を拡大し続ける「トランプ現象」の駆動装置ではないか、ということだ。
要はこういうことだ。
オバマ路線を基本的に受け継ぐクリントン氏のイメージは「継続」である。中間層の縮小や格差拡大という閉塞感がアメリカ社会を覆い、世界を見渡せば中露などの強権主義国家が存在感を高めるという混迷の時代において、トランプ氏とクリントン氏の二者択一になった場合、アメリカ人は果たしてどちらを選ぶだろうか、ということである。