なぜこの国の財務省は「経済成長優先主義」を頑なに否定し続けるのか

成長ナシのほうが、権益維持に好都合?
髙橋 洋一 プロフィール

筆者を「共演NG」にする人たち

最近、財務省ではないが、その関係者と意見をかわすことがよくある。筆者は財務省出身者であるが、これまで財務省関係者に避けられることがしばしばあった。

たとえばかつて、財務省のよき理解者である与謝野馨氏と日本テレビで共演を依頼されていたが、突然「その話はなかったことにしてくれ」と言われたことがある。財務省審議会の常連である某経済学者にいたっては、共演という話があったのに、急に出演しないことになった。いわゆる共演NGである。

こちらに共演NGはないのだが、相手がNGというのだから仕方ない。

今回、ラジオ日本の『清水勝利のこれでいいのかニッポン』からオファーがあり、共演NGを聞かれた。この番組は、政治家の方がよく出ている番組だ。いつものように「特にNGはありません」というと、「高橋さんの財政論を論破したいという政治家がいるので、共演してもらいたい」ということだった。

ところが、その政治家は、財務省から「高橋を論破するのは無理」といわれたようだ。急遽出演しないことが決まった。そこで共演となったのが、中川雅治参議院議員(自民)、宮本徹衆議院議員(共産)、小黒一正法政大教授であった。中川氏と小黒氏は財務省出身である。

共産党の宮本氏に、財務省からの推薦があったのかどうかわからない。が、ポイントは中川氏だ。同氏は、かつて財務省で筆者の上司であった。若いときから、いろいろと世話になった方だ。温厚で、仕事は手堅く、財務官僚の鏡みたいなひとだ。

中川氏は、国家安全保障に関する特別委員長として特定秘密保護法を採決した政治家として有名だ。普通の委員長は議事進行のメモ用紙を見ながら議事進行するので、野党議員からメモ用紙を取り上げられると採決できなくなる。そこで中川氏は、議事進行メモをすべて暗記して委員会採決に臨んだ。このため、野党議員が取り上げられるメモ用紙がなく妨害が不発に終わってしまった。

役人時代にも膨大な想定問答を記憶して、答弁を行っていた。筆者はずぼらで、数種類の基本的な考えを整理した後、その組み合わせてその場で対応するという省エネ・タイプなので、なおさら中川氏の網羅的な記憶方式に驚いた。

 

ラジオの収録室で、筆者の前に座った中川氏は、膨大な資料をもっていた。筆者がそれを見ると、財務省からもらってきたといっていた。中川氏は資料を読み込み、記憶していた。さすがである。

その一方、筆者はいつも資料なしの手ぶらである。もともと役人に向いていなかったのだと痛感する次第だ。

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