コロナ自宅療養 酸素飽和度を常に確認 呼吸回数も意識して

2021年8月31日 07時25分

指を挟んで酸素飽和度や脈拍を計測する「パルスオキシメーター」

 感染の急拡大が止まらない新型コロナウイルス。自宅療養者が全国で十一万人を超える中、酸素を十分に取り込めていないのに、息苦しさを感じず手遅れになるケースが警戒されている。専門家は、血液中の酸素飽和度や脈拍数を測る医療機器「パルスオキシメーター」で繰り返し数値を確認することに加え、呼吸回数も意識するよう呼び掛ける。 (細川暁子、植木創太)
 「自分で歩いて発熱外来に来た五十代の患者が診察中、突然意識を失った」。福井大感染症学講座教授の酒巻一平さん(55)は、昨年春、第一波で受けた衝撃を振り返る。「つらさはない」と言っていたが、コンピューター断層撮影(CT)をすると、肺は真っ白。深刻な酸素不足だった。
 患者が息切れなどを感じない「ハッピー・ハイポキシア(幸せな低酸素症)」は、新型コロナに特有の症状。気づいた時には手遅れになるリスクがあり、厚生労働省による診療の手引でも警戒を呼び掛けている。
 中指や人さし指を差し込んで使うパルスオキシメーターは「酸素飽和度」を測る機器。全身に酸素を運ぶ血液中のヘモグロビンの何%が酸素と結びついているかを示す。93%以下なら、酸素吸入が必要な「中等症II」に分類される。
 愛知県の医療体制緊急確保チーム統括官で名古屋掖済会病院副院長の北川喜己さん(62)によると、指先が冷たいと正しく測定できない。指を温めたり繰り返し測ったりすることが重要。光が遮られるためマニキュアやつけ爪はとる。
 多くの自治体は自宅療養者にメーターを配っているが、感染の急拡大で全国的に不足気味だ。二十九日現在、自宅療養者が過去最多の五千八百九十六人に上る名古屋市も全員に渡すのは難しい状況。追加分が届くのを待ちながら、症状に応じて配布を絞っている。
 メーターがない場合、酒巻さんは胸に手を当て一分間の呼吸回数を数えるよう勧める。安静な状態で呼吸が二十回を超えるなら、一度の呼吸で取り込める酸素量の減少分を、回数を増やすことで補っている可能性がある。肺の機能低下に気づく手だてとして役立つ。
 「酸素飽和度が正常値でも、呼吸回数が異常なら要注意」と酒巻さん。「異変があれば、迷わず助けを求めてほしい」と訴える。

◆食料や日用品 備蓄しておく

 十七日の感染判明以降、二十五日まで一人暮らしの自宅で療養した横浜市の会社員、山口耕平さん(33)は「周囲の助けがないと乗り切れなかった」と話す。
 酸素飽和度は神奈川県から貸与されたパルスオキシメーターで毎日測定し、98%をキープ。コロナ自体は軽症だったが、困ったのは食料だ。行政の支援物資が初めて届いたのは二十二日。それまでは実家の両親が送ってくれたり、会社の同僚が玄関前に届けてくれたりした。「熱と酸素飽和度をLINEで毎日、県に知らせるだけ。孤独だった」
 流行の収束が見通せない中、北川さんは「万が一に備え、普段から食料や常備薬、日用品などを自宅に置いておくことが大事」と説く。一人暮らしで感染した場合は必ず家族や知人に知らせ、助けてもらえる態勢を整えたい。

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