海外輸入からOEM、自社生産へと大きな変化を乗り越えるために必要な考え方とは?
インタビューの概要

サヨリ商店街株式会社(以下、サヨリ商店街)は、日本製高品質のレオタードを始め、オリジナルのダンスウエアの製作、販売をしている愛媛県新居浜市のメーカーです。1998年からネット通販を始めた同社の代表である千葉小織さんは、今に至るまで環境や市場の変化に合わせて適応し、何度となく変化をしています。海外からの商品仕入れから物販を始めて、取扱商品をOEM生産へと切り変え、今では自社で縫製工場持って生産をしています。大きな変化を求められたタイミングで、どのように考え行動して前進したのか、お話を伺いました。

海外輸入から始まったネットショップの運営

――ネット通販の世界に入ってから約23年経ちますが、まずは物販を始めたきっかけについて教えていただけますか?

千葉さん:ネットショップを立ち上げたのは1998年でしたが、その前に趣味として個人輸入をしていました。イギリスのハロッズやアメリカのシアーズ、スミソニアン博物館などから子供服等を取り寄せて買っていたんです。それに並行する形で、子犬を飼い始めて、成長過程をホームページで伝えていました。ホームページのコンテンツとして、輸入していた子供服をフリーマーケット感覚で売り始めたら一気にアクセスが伸びたので、その流れで海外の絵本など他のものも出していきました。

こうしたきかっけから、ホームページに私の名前を取って「サヨリ商店街」という名前をつけました。バーチャルな商店街をインターネット上に作ろうと思ったことから着想を得ています。

当時は結婚していて、元夫が経営する葛飾区の町工場を手伝っていました。景気が良かったころもあり、ハワイやグアムに社員旅行をする機会があったので、そのついでに仕入れとして商品を買い込んでいました。また、情報収集を雑誌でする時代でしたので、アスキーで「ネットショップでお店を構えよう」というのを見て、本格的にネットショップを作成することを考えました。会社、スーパー、自宅を行き来するしかなかった自分の生活にインターネットが入ってきたのです。最初はホームページビルダー(ホームページ制作ツール)から始めて、わからないことは本屋に情報誌を読みに行ったり、ネット上の掲示板に質問をしたり、その都度なんとかして課題を解決していきました。直面した問題を解決するために情報収集する習慣がこういった経験を通して身につき、今に活きていると感じますね。

海外輸入から始まったネットショップの運営

段々とホームページで販売していたことが商売になると感じた2000年に離婚をすることになり、実家のある愛媛に戻ることになりました。田舎でもできることを考えた結果、ネットショップの運営に本腰を入れるようになっていきました。

OEMでオリジナル商品を作り競合と差別化

――趣味の延長から本格的に生活のためにネットショップの運営を始めたのが2000年。その後は順調だったのでしょうか?

千葉さん:頑張るシングルマザーというパーソナルブランディングをしながら、仕入れや子育ての相談を受けて100名程度の会員制BBS(掲示板)を運営しました。ブログを通して商品や自分自身のブランディングを行うなど順風満帆な立ち上がりだったと思います。

2004年に楽天市場に出店しました。出店当初は時代の後押しもあり、商品を出していれば売上が伸びていきましたが、段々と同じような商品(輸入子供服)を扱う競合が増えていき、売上を伸ばしていくのが難しくなっていきました。

このままでは立ち行かなくなってしまうと感じ、自社ブランドを作ることを決心します。何を作ろうか悩みましたが、バレエのレオタードを作ることにしました。もともと、会員制BBSをやっていた頃にメキシコなど南米産のレオタードを米国から仕入れていたのですが、可愛いデザインにもかかわらず作りが雑でした。これを品質の高い日本製で販売しようと思ったんです。輸入したレオタードを見本に、作ってくれる人をBBSで募集し、作っていただいたのが第1号です。

OEMでオリジナル商品を作り競合と差別化

千葉さん:そこからはレオタードやドレスなどサンプルを持って、OEM(Original Equipment Manufacturer:発注元が企画・設計し、生産を委託する)で作ってもらえないか国内外の縫製工場へ体当たりでお願いしに行きました。私がいた愛媛から近場の高知や、海外だと中国や韓国まで行くこともありましたね。

いくつかの工場に実際にお願いしてみると、当時は海外では布や縫製など粗さが出てしまい、洋服に針が残っていたり、布の色落ちが激しかったりと品質管理が大変でした。体当たりで走りながら学ぶスタイルだったので、どんなトラブルやリスクがあるか想定せずにやっていたため、甘い条件で契約を交わしたことで、苦労が耐えませんでした。最終的には岩手にある有名な工場にお願いしました。これも愛媛から直接お伺いしてお願いして、なんとかやっていただくことになったんです。

デザインはお客様の意見を取り入れたり、外国の良いデザインを参考にしたり、お客様と市場の動向を見ながら新商品を出していきました。

自社縫製工場を立ち上げて圧倒的スピードアップを狙う

――無事OEMの委託先が決まり、自社ブランドの立ち上げができました。しかし、その後、自社で縫製工場を立ち上がるに至っています。OEMから完全自社生産にしようと思った背景を教えていただけますか?

千葉さん:自社で縫製工場を持つに至った理由は大きく分けて2点ありました。OEMの場合、新商品として1デザインを世の中にお披露目するまでに数ヶ月掛かってしまうこと。細かい修正を行うにしてもスピード感を持った対応ができないことが課題でした。

ヒット商品を出すためにはサンプルを上げる回数を増やす必要があります。また、ネットショップを運営しているとお客様からすぐに声が上がってきます。お客様から上がる細かい修正や改良などの声を商品にすぐに反映したい気持ちが強くありました。

実際に自社で工場を持って運用すると、新商品を作るにしても1週間ほどでできますし、細かい修正についてはすぐに対応可能です。縫製工場を持つメリットがある一方で、もちろん苦労もありました。

サヨリ商店街の縫製工場
サヨリ商店街の縫製工場

――OEMから自社生産に切り替えたいと思ってもできない企業が非常に多い中、どうやって立ち上げから安定稼働に向けてどうされたのか気になります。

千葉さん:立ち上がりから前途多難ではありました。OEMのときは現物を見せて商品を作ってもらっていたのですが、自分の工場で同じやり方をしたところ、うまくいきませんでした。そこで仕様書が必要だということを学び、色々な縫製工場を見学しながら工場の整理整頓の仕方や仕様書の作り方を勉強しています。工場を立ち上げて5年になりますが、やっと上手く回り始めたように思います。今もトヨタで活躍されていた工場現場カイゼンマイスターの方に製造の流れを見ていただいて、日々改善をしているところです。

仕組みの面だけではなく、人の面も同様にとても大切です。とにかく早い流れで会社を動かしていたので社内に「我々は今から変わるんだ!」ということを刷り込んでいくことが大事でした。変化に戸惑いを隠せない人も社内にはいるため、経営者がリーダーシップを持って会社を先導しなければなりません。会社が変わっていくための雰囲気・環境づくり、適材適所の人員配置や採用の見直しなど、状況に応じて適宜調整していきました。

今までネットショップの運営を担当していた社員が配置転換によって、ある日突然生地を裁断してもらうこともありました。驚きもあったかと思いますが、実際に自分で作ることで、商品やブランドへの愛着が増していくことが目に見えてわかりました。セールで安く販売すると社内から「なんでここまで安くするんですか!」と怒られることもあるくらい、社員が商品愛を持っているんです。また、企画から製造まで社内で一元化することで、各工程の人材が責任感を持ち、プロフェッショナルになっていく動きもありました。

インタビューを通して:お客様に求められるものを追求して成長痛を乗り越える

もともと仕入れ商品の販売から始めたサヨリ商店街は23年の間でお客様の声や市場の動向を見ながら絶えず変化を続けてきました。その都度、代表の千葉さんは苦労に直面しているものの、前へ前へと進む姿勢で成長を続けています。印象的だったこととして、自社生産が、新商品の発売や商品改善のスピードアップ以外にも、社員のプロ意識や商品愛の向上につながったことはお話を伺っていて驚きました。

今回はサヨリ商店街の立ち上げから縫製工場を立ち上げ、安定稼働するに至るまでのお話を記事にいたしました。レオタードやドレスを取り扱うサヨリ商店街では、新型コロナウイルスの影響でバレエ業界でもイベントや教室が休止してしまい売上に打撃を受けてしまいます。しかし、その窮地を乗り越えるべく取った施策による会社は軌道に乗っています。次回のサヨリ商店街インタビュー記事のパート2として、サヨリ商店街が取った施策や会社を経営する上で変わらない軸、今後の展望について掲載します。

■サヨリ商店街

・web本店
https://www.sayori.co.jp/

・楽天市場店
https://www.rakuten.ne.jp/gold/sayori/

・Yahoo!店
https://store.shopping.yahoo.co.jp/ballet-sayori/

・Amazon店
https://www.amazon.co.jp/s?me=A3DR2LGPDCN235&marketplaceID=A1VC38T7YXB528

・au PAY マーケット店
https://wowma.jp/user/43623229

・Shopeeシンガポール店
https://shopee.sg/shop/538794280

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