第28回全国都道府県対抗男子駅伝は、長野が大会新記録の2時間17分10秒で優勝した。

立大監督を務め、アンカーの大役を果たした上野裕一郎(37=セントポールクラブ)が、最多の9度目Vのゴールテープを切った。上野の母校・佐久長聖の山口竣平(2年)、吉岡大翔(3年)が4、5区で区間新を連発し、1位を死守。上野の力走で逃げきった。コロナ禍で昨年まで2年連続中止。長野は20年から“連覇”を果たした。

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監督が「監督」を胴上げした。月桂(げっけい)冠をかぶりながら満面の笑みで宙を舞ったのは「日本一速い監督」と評される37歳だ。立大の駅伝監督を務める上野は「4回目ですかね。またゴールテープを切れて、これほど幸せなことはない」と目を細めた。

「本職」は監督だ。18年から立大で指揮を執る。4年目にして、今年はチームを55年ぶりに箱根駅伝出場へ導いた。自分の練習をする時間はなく、1日に30分走れるかどうか。最長13キロの7区を任され「5キロくらいで動きが怪しかった」と振り返る。だが、佐久長聖の後輩らの激走で49秒差のトップで渡されたタスキ。「自分のタイムは二の次」という、監督らしい冷静な判断で確実な走りに切り替え、9回目Vに貢献した。

異例の快挙だ。大会前に「たぶん年齢的にもラスト」ともらしていたが、自ら引退はしない。「『市民ランナー』として好きに走ってるので(今後も)選ばれれば(出る)」と笑った。

実業団や大学生選手と競って38分11秒で区間12位。「これで12位?」。十分に練習していない中での結果に、指導者としては日本陸上界の今後に不安を感じる。「自分も育成にもっと力を入れないといけないと改めてわかった」。その顔は、もう監督に戻っていた。

3年連続で全国高校駅伝に出場し、中大でも4年連続で箱根路を駆けた。09年に5000メートルで世界選手権に選出された快足は健在だった。出場11回目で、またも頂点に立った上野は「いい駅伝だと伝えられる」と満足そう。最高のお手本になった。【竹本穂乃加】

○…昨年12月の全国高校駅伝で準優勝した佐久長聖メンバーが躍動した。4区の山口竣平(2年)が区間新を記録し、優秀選手賞も受賞。「上野さんの存在があったからこそ区間賞をとれた」と話した。5000メートルの高校記録を持つ吉岡大翔(3年)も5区で区間新。上野の走りを見て「自分も憧れてもらえる選手になりたい」と先を見据えた。