中途半端な政策変更、好循環妨げ望ましくない=10月日銀会合意見

中途半端な政策変更、好循環妨げ望ましくない=10月日銀会合意見
 日銀が10月27―28日に開いた金融政策決定会合で、物価目標を持続的・安定的に達成する上で「中途半端な政策の変更は物価と賃金の好循環を妨げるリスクがあり、望ましくない」との意見が出ていたことが分かった。都内で6月17日撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 8日 ロイター] - 日銀が10月27―28日に開いた金融政策決定会合で、物価目標を持続的・安定的に達成する上で「中途半端な政策の変更は物価と賃金の好循環を妨げるリスクがあり、望ましくない」との意見が出ていたことが分かった。
日銀が8日、会合で出された主な意見を公表した。同会合では金融政策の現状維持を全員一致で決めた。ある委員は「賃金上昇の実現可能性を高めつつ、物価目標を実現するため、現在の金融緩和を継続することが適当だ」と述べた。
別の委員は、企業業績が高水準で推移し、賃金上昇の動きが見られていることを踏まえ「日本経済には好循環の兆しが出てきている」として、当面の金融政策運営は現状維持が適当だとした。
<物価、大きく上振れるリスクも>
同会合で取りまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しを前年度比プラス2.3%からプラス2.9%に引き上げた。23年度、24年度も引き上げたものの、2%には届かなかった。
会合では「今年度は物価上昇に広がりが見られ、上振れる可能性もあるが、今後の持続性にはまだ確信が持てない」との指摘が出た。世界経済の減速の影響なども踏まえると、来年度以降の消費者物価はプラス幅を縮小し「2%を下回る可能性が高い」との発言もあった。
その一方で、ディスインフレが長年続いた後の物価上昇局面であり、グローバル化の逆回転など構造的変化もあるとして「過去の経験がそのまま当てはまらず、物価が大きく上振れするリスクも否定できない」との声が上がった。コスト・プッシュとは言え、川上から川下へ価格転嫁が広がる中で「物価が上がらないことを前提とした企業の行動原理が変わりつつある可能性がある」との意見も見られた。
<緩和継続の効果・副作用>
会合では、長期化する金融緩和の効果・副作用双方について指摘が出ていた。金融緩和の継続により、中長期の予想物価上昇率が緩やかに上昇し「実質金利の低下を通じて、日本経済への一段の緩和効果が顕現化する兆しが生じている」との意見が出された。金融緩和は、労働需給の引き締まりやインフレ予想の高まりを通じて「名目賃金の上昇に作用する」と指摘する委員もあった。
一方で、ある委員は「金融政策を直ちに変更する必要はないが、副作用に目を配るとともに、物価高が家計の行動や賃金にどのような影響を与えるのか、謙虚に予断なく検証していく必要がある」と話した。
将来の出口戦略が市場にどのような影響を与えるのか、市場参加者の備えが十分なのか、確認を続けることも重要だとの意見も聞かれた。
<為替警戒はトーンダウンか>
急速に進む円安を受け、政府・日銀は9月に円買い介入を実施した。ただ、10月の決定会合の「主な意見」では、為替に関する意見は「為替水準はファンダメンタルズに沿って決まるべきものだ」のみとなった。
債券市場については「債券市場の安定性確保は重要であり、引き続きモニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握する必要がある」との意見が出ていた。
欧米が歴史的なペースで金融引き締めを続ける中、「想定を上回る海外経済の減速や、実質金利の急上昇に伴う資産価格やクレジット市場の急変などのリスクに注意を要する」との指摘もあった。
(和田崇彦)

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