米国、国家気候変動評価報告書の草案発表、脱炭素化に毎年6%以上の排出削減が必要

(米国、エジプト)

ニューヨーク発

2022年11月09日

米国連邦政府は117日、5回目の国家気候変動評価報告書の草案を発表した。正式には11月10日の官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされる。草案は2023127日(米国東部時間)までパブリックコメントを受け付けている。

国家気候変動評価報告書は米国の気候変動について、4年ごとに連邦政府から大統領と議会への提出義務がある報告書で、今回で5回目。パブリックコメントなどを経て、2023年秋ごろに最終報告書の取りまとめが予定されている。

草案では、2007年から2019年の間に、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの活用や石炭利用の削減により、米国の二酸化炭素(CO2)排出量は約12%削減されたと評価した。一方で、米国は地球全体と比べて、約1.7倍速く温暖化が進んでおり、1970年以降の地球全体の気温上昇の平均である華氏1.6度(摂氏約0.9度)を上回る華氏2.5度(摂氏約1.4度)の上昇に現在見舞われているとした。気候災害も多発しており、1980年代には4カ月に1回だった10億ドル規模の災害が現在では3週間に1回の頻度で起こっているとしている。また、国際公約である2050年の脱炭素化には毎年平均して6%以上の排出削減が必要とも指摘している。環境保護庁によると、大規模産業からの2021年のCO2を含む温室効果ガスは前年比で約4%増加しており、公約の達成にはさらなる削減努力が必要なことがあらためて示されたかたちだ。

一方で、明るい見通しもある。米エネルギー情報局(EIA)が同じ7日に公表したデータによると、国内の石炭火力発電所の約4分の1が老朽化によるコスト増に加え、再エネ発電などとの競合により、2029年末までに運転を終了する見込みだ。草案でも、再エネなど低炭素エネルギーが迅速かつ広範に展開することで、米国の脱炭素社会への移行が加速、ネットゼロ目標の達成可能性が高まるとしている。

116日からエジプトのシャルム・エル・シェイクで国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開催されている。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は世界1位と2位のCO2排出量を占めている中国と米国に対して、両国の同分野での協力・協議は関係悪化を理由に実質的に中断されている状態であることから、温暖化対策で両国は責任を有していると言及したとされている。1111日には米国のジョー・バイデン大統領の会議出席が予定されており、中間選挙を終えた大統領からどういった発信が行われるか注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国、エジプト)

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