細田守監督「母性や父性にとらわれているのでは?」(小原篤のアニマゲ丼)

有料記事小原篤のアニマゲ丼

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 「竜とそばかすの姫」を見ました。細田守監督3年ぶりの新作で、初見の印象は「ちょい微妙」。2度目を見て「ああそういうことか!」と得心しました。これはつまり「母性に守られていた主人公が母性を発動するまでの物語」。しかしその解釈を細田監督にぶつけると少し険しい顔で「それはどうかな。小原さんが母性や父性というものにとらわれているんじゃないですか?」。これから詳しく書きます。ネタバレありです。

 主人公は高知の田舎で生まれ育った内気な高校生すず。幼い頃に母を事故で亡くして以来、大好きな歌が歌えなくなったが、全世界で50億人が集うネットの仮想世界〈U(ユー)〉に、親友ヒロちゃんの勧めで参加したところ、そこでは自然に歌うことができた。ネット上の分身「ベル」になって自作の歌を披露したところ歌姫として世界中の人気者に。コンサートに乱入してきた「竜」と出会ったベルは、荒々しい外見と振るまいに戸惑いつつもなぜかひかれていく。すずは竜の優しさと傷ついた心の痛みを知るが、彼はルール無視の乱暴さゆえ〈U〉で憎悪の対象になり、正体探し(つまり「身バレ」という罰を与える)が過熱していく――という物語。

 発想の源は「ネットで『美女と野獣』をやってみたら」。細田監督はディズニーアニメ「美女と野獣」(1991年)を深く愛しており、また、ネット世界を「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」(2000年)と「サマーウォーズ」(2009年)で描いており、「誹謗(ひぼう)中傷やフェイクニュースといったネガティブな面が強調される中、ネットを肯定的に描き続けている世界で唯一の映画監督じゃないか」と自負しています。

 初見の印象がなぜ「微妙」だ…

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