ここ数年、「ありのままの自分を愛しましょう」という空気が満ちているように見えるエンタメ業界だけれど、“美の定義”を打破するには至っていない? SNSや同業者(!)から受けた「ボディシェイミング」に実は傷ついた、セレブの本音とは。
輝くセレブも「美の定義」に本心は四苦八苦?
Apple TV +で配信されているドキュメンタリーシリーズ「Dear...」のエピソードで、セレーナ・ゴメスがボディシェイマーたちの意地悪なコメントを「気にしていない」と語っていたのが、実際は嘘だったと告白。セレーナのように、SNSワールドで声を上げるファン(なの?)のボディシェイミングに傷つくセレブの本音が知りたい。
セレーナ・ゴメス
ティーンの頃からほっそりしていたセレーナの体重増加の原因は、2015年に公表した難病、全身性エリテマトーデス。腎臓移植手術を受けたとはいえ完治するのが難しい病気で、投薬治療も必要。投薬中は水分摂取量が増えることもあり、体重が増加するという副作用があるのだそう。そういう状況なのに、2014年くらいからSNS上に「セレーナが太った」「信じられない、デブ」といった悪口を書き込む人が続出。その度に彼女はインスタグラムに自身の「今」の写真を投稿し、ボディシェイミングなんて「気にしない」という態度を表明。ボディポジティブを牽引していたようにファンは感じていたけれど、「実際は自分の部屋で泣きくれていたの」と番組中で告白。強気な投稿も実は、同じような体験をしている人たちに引け目を感じて欲しくなかったからで、「見た目や性格、好きなことを悪しざまに言われるなんて、とても不公平だと思う」と付け加えていた。
心ない人々の言葉に傷つき、涙を流してきたセレーナだけど、最近は本当に強くなったもよう。1月にゴールデングローブ賞授賞式への出席後に妹グレイスと一緒にインスタグラム・ライブに登場。「ホリデーシーズンを満喫したから、今はちょっとビッグなの。でも気にしない」と大笑いしていた。そう、セレーナを批判するボディシェイマーこそ心ない自分自身を恥じるべきなのだから!
プリヤンカー・チョープラー・ジョナス
セレーナの告白から数日後、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭イベントに登場したプリヤンカー・チョープラー・ジョナスが「昨日、ある人に『あなたはサンプルサイズではない』と言われたの。すごく傷ついて、夫やチームに泣きついたわ。自分がサンプルサイズではないことに罪悪感を感じたの」と告白。ちなみに彼女が言ったサンプルサイズというのは、サイズ2の衣類で、これは日本でもSサイズ。身長165センチのプリヤンカーなら、サイズ4が適正だから、ファッション業界のサイズ感覚、間違っているとしか思えない。
とはいえ、ミス・ワールドの栄冠に輝き、ボリウッド入りした彼女は長年、“スリムで完璧な女性”でいるようにという業界内外からのプレッシャーを感じていたという。ポスターに使われた写真が彼女自身の肌色よりも薄くする加工されたこともあるようだ。一人の人間や一人の女優ではなく、商品として扱われることもあるといい「私が人間であることを人々が忘れてしまったように感じることがある」とも嘆いていた。以前、「容姿とは関係ないことで自信をつけられれば、自己肯定しやすくなる」と語っていたプリヤンカーだけど、ボディシェイマーたちの呪縛からは、なかなか逃れられないのも事実のよう。
ジェニファー・ローレンス
普通サイズであっても、ハリウッド基準だと肥満になると2012年にUS版『エル』で語っていたのは、ジェニファー・ローレンス。デビューしたばかりの頃、プロデユーサーや監督、キャスティング・ディレクターたちから「太っている女優」と言われて、落ち込むこともあったという。しかし『ウィンターズ・ボーン』(’10)で演技力を高く評価され、オスカー候補となったことで形成逆転。ハリウッド女優に何が求められるか、舞台裏で行われるゲームを勝ち残るには何が必要かを慎重に見極めて『ハンガー・ゲーム』(’12)の主役に抜擢された彼女は、健康で強く見えるようにハードなトレーニングを自分に課した。それはスリムダウンするのではなく、サバイバルゲームを生き延びる女性へと変貌するためのものであり、彼女の狙いは的中。スター度がアップしたジェニファーは我が道を歩めるスターへと成長し、無理な減量を強いられることとは無縁の存在に!
クロエ・グレース・モレッツ
子役として注目されたクロエ・グレース・モレッツは、ファン(?)による画像修正のせいで身体醜形障害にも似た不安症に悩むことになったという。ピザの箱を抱えてホテルに戻るクロエの写真を何者かが、足を長く、胴体を短く修正。それをアニメ「ファミリー・ガイ」のキャラクター、Legs Go All the Way Griffinと並べた写真がバイラルになったため、クロエは「他人が勝手に私の体を笑っている」と心が深く傷ついたという。クロエはまた共演者によってボディシェイミングされた経験もある。2017年に業界誌『ヴァラエティ』のインタビューで明かしたのだが、彼女より7〜8歳年上の俳優が「クロエとは絶対にデートしないよ。だって彼女、大きすぎるだろう」と言う場に居合わせたのだという。単なる共演者であり、クロエが彼に好意を抱いていたわけでもないが、発言はやはり衝撃的だった。レッドカーペットでドレスアップした写真を見る限り、「大きすぎる」なんて表現はクロエには当たらないし。そんな彼女だから、パンデミックが始まってマスクが必須となった2020年以降は、「人目を気にせずに外出できるて、すごくよかった」とのこと。ペンは剣より強しというけれど、言葉の鋭さって怖いと思わせるエピソードだ。
エマ・ストーン
スリムであってもボディシェイミングのターゲットとなるのがエンタメ界で生きる人にとっては怖い点。エマ・ストーンは、注目度がアップすると同時に「痩せすぎ」のレッテルを貼られる羽目に!? 何らかの摂食障害ではないかと勘繰るファンも少なくなく、SNSに「もっとサンドイッチを食べた方がいい」とか「痩せすぎで怖い」なんてコメントを書き込まれることもあるようだ。しかし、エマ本人は健康そのもの。実際、インタビューなどでも「ストレスを感じると体重が減りがち」と語っていて、さまざまなプレッシャーがかかるハリウッドで体重維持する方が彼女にとってはとても難しいようだ。仕事とプライベートを可能な限り切り離しているエマは、「健康的な方法で自分をケアする」を優先し、母親となった今は「娘に接するように、自分にも優しくしよう」と自身の健康に気を配っているという。太っていても、痩せていても悪口を言われるのってセレブの宿命? 何が正解なの?
レナ・ダナム
自分探し真っ最中である20代女性4人組の恋と友情を描いたドラマ「GIRLS/ガールズ」で才能あるクリエイター兼女優として注目されたレナ・ダナムは、20代の時に受けたボディシェイミングが相当のトラウマだったという。当時、ぽっちゃり体型のレナが劇中でヌードになっていたのは、リベラルでフェミニストな両親に育てられた彼女は自分の肉体が批判の対象になるとは思ってもいなかったから。そして批判を気にすること自体が薄っぺらいと感じ、懸命に批判に気づかないふりをし続けたという。「自分が醜い牛だという罵詈雑言を浴びせられながらも、私は本当は素敵な存在だという気持ちを持ち続けることができると思ったの」という発言が痛々しい。
絶え間ないボディシェイミングはレナの自己形成に悪影響を与え、彼女という人間をすっかり変えてしまった。そう、人々の目を恐れるあまり、薬物に依存し、リハビリ施設の戸を叩くまで落ち込んだのだ。豊かな才能が潰されなかったのは、レナ本人の強さやユーモアのセンス、そして家族の支えがあったからだろう。依存症から立ち直ったレナは、ミュージシャンのルイス・フェルベルと結婚。イギリスに拠点を移した現在の彼女は、「GIRLS/ガールズ」撮影中よりももっとビッグでカーヴィーだけど、心は平穏そのもののようだ。
コートニー・カーダシアン
セレブに対するボディシェイミングのひとつが、「妊娠しているに違いない」という根拠のない推測をSNSにアップされることだろう。トラヴィス・バーカーとの交際を明らかにして以来、妊娠説を何度も流されて怒っているのがコートニー・カーダシアンだ。デートナイトのパパラッチ写真やレッドカーペットを二人で歩く写真を見た人が「コートニーがぽっちゃりしているのは妊娠してるからね」だの「グラミー賞授賞式パーティのドレス、ベイビー・バンプ隠しに違いない」だのと書き連ねる。コートニーとトラビスは元パートナーとの間にすでに子供がいるけれど、二人の愛の結晶を待ち望んで、体外受精の施術を受けていることをオープンにしている。なかなか授からない苦悩をリアリティ番組中でも明らかにしているわけで、外野のヤジは二人にとっては単なる騒音でしかない。ほんと、余計なお世話。
ビヨンセ
新アルバム『ルネッサンス』カバーで、美ボディを見せつけているクィーンBことビヨンセも、ボディシェイミングとは無縁でない。数年前、雑誌インタビューでキャリアを振り返った際、ボディポジティブのアンセムとなっているヒット曲「ブーティリシャス」のインスピレーションについて言及。実はこの歌は、ビヨンセ自身が受けたボディシェイミングへの答えとして作ったものだというのだ。当時、19歳のビヨンセは体重が増えた途端に人々が彼女の外見に対して発信するネガティブなコメントに不安を覚えたそう。衣裳サンプルもキツくなり、自信を失いかけたある朝、「自分を可哀想と思う必要はない」と一念発起。カーヴィーなボディへの讃歌として「ブーティリシャス」を書き上げたのだ。女性に自信とパワーを与えてくれる歌は大ヒットし、ビヨンセは「この歌は、私が人生から与えられたどんなものでも利用し、同じことで悩んでいる人たちに力を与えるものに変えた始まりでした」とキッパリ。
メラニー・リンスキー
ファンではなく、モデルからボディシェイミングされたのが、メラニー・リンスキー。「イエロージャケッツ」でエミー賞候補となるなど、演技派として人気の女優だ。ケイト・ウィンスレットと共演した『乙女の祈り』(’94)出演時から普通体型を通してきた彼女が世紀末的な社会が舞台のTVシリーズ「ラスト・オブ・アス」(U-Nextで配信中)に出演するや、モデルのエイドリアンヌ・カリーが「彼女の体は贅沢な生活を物語っていて、世紀末の戦争屋ではない」とツイート。メラニーは「私がキャストされたことに腹を立てる人がいるのはわかるけど」としながらツイッターで反論を繰り広げ、さらにドラマや彼女のファンもエイドリアンヌのツイートが非常に馬鹿げたものだとメラニーをバックアップ。
メラニーは、これまでも何度もボディシェイミングの被害に遭っていて、「イエロージャケッツ」撮影中には制作陣の一人から「その体、どうするつもり? プロデューサーがきっとトレーナーを雇ってくれるよ」と無礼なことを言われたけれど、ジュリエット・ルイスをはじめとする共演者たちがメラニーの意見を尊重すべきと反発したことを公表している。メラニーのようなぽっちゃり体型の女優も必要だとわかっている人はわかっているということ。
「ボディポジティブ! 」とまではいかなくても
ボディシェイミングされて落ち込んだり、逆に奮起したりとセレブの反応もいろいろ。でも他人に批判されながらもボディポジティブなメッセージを発信したり、ありのままの自分を愛することができる強さは、やはりセレブならではなのかも。セレブの強さを見習いたいけど「私には無理かも」という場合は、とりあえず他人に優しい気持ちで接することを最優先するのがいいかもしれない。アカデミー賞授賞式のシャンパン・カーペットでヒュー・グラントに無礼な態度を取られながらも上手に受け流したアシュリー・グラハムも「Kindness always wins(優しさは必ず勝つ)」と言ってるしね。