東国原英夫。言わずと知れた宮崎県知事だ。
サーチナは4月末に同知事への独占インタビューを敢行。県庁の知事室で中国・アジア戦略構想を「そのまんま」にお話しいただいた。宮崎にかぎらず、九州地方は日本の中で最もアジア動向に敏感であり、地域活性化のため、中国を中心としたアジアとの連携が欠かせないのはすでに常識。「宮崎県物産のアジアへの販路拡大は公約のひとつ」と意気込む東国原知事からは、“現場”の臨場感と情熱を強く感じた。


――最近では宮崎は台湾との直行便を就航させるなど、「アジア」ということで力を入れられていると思いますが。

東国原:宮崎は台湾との直行便を就航させましたが、鹿児島には上海との直行便があります。
台湾便の就航は、鹿児島とのバッティングを避けるためという目的も大きいのです。宮崎と鹿児島は車で約2時間程度の距離で、圏内です。宮崎は台湾、鹿児島は上海、それらやそのほかの中国へは、これも車で、少し遠いですが宮崎から3-4時間の福岡。それぞれの役割を効率的に分担している、というのが僕の考えです。鹿児島もそうですが、宮崎にもソウル便があります。九州はアジアに近い。
特に中国とはお隣さんです。中国を中心としたアジアとのヒト・モノ・カネの交流は今後絶対に必要です。

――「役割の効率的な分担」ということで、宮崎のみならず、九州全体を見据えているようですが。

東国原:宮崎単独、というよりも、九州全体が中国を中心とするアジアに目を向けていくことが重要だと思います。地理的にも優位性がありますし、県単独よりは規模(ロット)の上でスケールメリットも生かせます。また「九州」ブランドを押し出していく方が効率的です。
特に僕は来るべき道州制を見据えています。九州にある程度の行政権・財政権など自治権が移譲されれば、関税優遇や企業向けの減税措置など、今まで以上に九州全体でのアジアへの取り組みということが可能になると思います。

 個人的な構想ですが、僕は福岡と韓国・釜山(プサン)に海底トンネルを掘り、新幹線、あるいは高速道路を通せないかと考えています。日本はもちろん、韓国、中国、東南アジアを含めて、今後EU(ヨーロッパ連合)のように協力・協調して発展・成長していかなければならない時代がやってくるはずです。歴史、文化それぞれ違いはあっても、持続的な成長のためには連携していかなければならない。そのためにはインフラ整備が必要であり、「陸」でアジアとつながることも重要だと考えるわけです。
それには日本の中では福岡-釜山しかないのです。

――海底トンネルとは重厚長大な構想ですが、具体的な動きなどはあるのでしょうか?

東国原:いえ、まったく。「何をたわけたことを」と失笑されることもあります。僕個人の夢物語として思っている段階です。まずは、国が九州に権限を委譲し、中国やアジアのある省、ある地域との連携を強化し、その成功事例をもとに、国同士のFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)につなげていく、というのが順番だと思います。最初は国同士ではなく、ポイントポイントで、まずはリーズナブルに、グローバルの中のローカル、つまり「グローカル」として、網目のように広がっていくのが理想でしょう。


――近々、中国に訪問される予定はありますか?

東国原:中国・上海は1995年に行ったのが最後です。上海はもう僕が知っている当時の面影はなく、別世界だ、ということを周りの人からよく聞きます。行きたいとは思っているのですが、なかなか時間がとれません。宮崎は上海に事務所も出しておりますので、今後1年内にぜひ行きたいと思っています。本来は上海万博に合わせて行きたかったのですが、口蹄疫の問題もあって、今はこちらに注力しています。

 上海万博への九州パビリオン出展という構想もありましたが、諸々の条件で実現しませんでした。
ただ、上海万博には九州全体として、会場内でのイベントなどを行って関わっていく予定です。

 今後、九州全体として、または南九州、熊本・宮崎・鹿児島の物産を売り出していきたいと思います。特に可能性が高いと考えているのは焼酎です。台湾、香港、マカオに加え、中国にも現在、県内の焼酎メーカーが輸出を行っていますが、今後更なる販路拡大が図れればよいと考えています。(編集担当:鈴木義純 聞き手:有田直矢 サーチナ常務取締役 共同制作:人民網日本株式会社)

[サーチナ編集後記]まず宮崎県の口蹄疫の問題について、お見舞い申し上げたい。各界から支援の声が上がっており心強く思うと同時に、サーチナとしてもできうる支援・協力をしていきたいと考えている。ご多忙中にご対応いただいた知事ご本人はもちろん、ご手配いただいた県庁の皆さまに厚く御礼申し上げます。今まであまり紹介されたことのない、知事の中国・アジア戦略を聞き出せたのではないかと思う。今後2回も是非ご覧いただきたい。自称「セールスマン」ということが、一部で軽く見られがちだが、相手にモノ・サービス・強みを売り込むことこそが、現在の日本の政治に求められているのではないか、と強く感じさせる知事の情熱ほとばしるインタビューだった。

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