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きっと来る! 25周年の映画「リング」シリーズを貞子ファンが全力紹介

ホラー界に一大ムーブメントを巻き起こした日本映画「リング」の公開から早25年。平成の世を舞台に、「ビデオテープ(VHS)」という当時誰にとっても身近だった小道具をフィーチャーしたストーリーと、衝撃のクライマックスによって、映画「リング」は大ヒット作となり社会現象化した。

なかでも、20世紀末の新たな恐怖アイコンとして登場した怨霊・山村貞子のキャラデザは秀逸だった。その存在は、「日本の怪談」を「世界的なジャパニーズホラー」にアップデートさせた立て役者と言っても過言ではなく、今なお、令和になっても貞子を軸として「リング」の関連・続編映画は制作され続けている。それこそ、リングウイルスが時代を超えて進化し増殖し続けているかのように……。

●「リング」DVD:2,750円(税込)/Blu-ray:4,180円(税込)/発売元:角川書店/販売元:ポニーキャニオン/(C)1998「リング」「らせん」製作委員会 ●「らせん」DVD:2,750円(税込)/Blu-ray:4,180円(税込)/発売元:角川書店/販売元:ポニーキャニオン/(C)1998「リング」「らせん」製作委員会 ●「リング2」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA ●「リング0〜バースデイ〜」 Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA ●「貞子 3D」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA ●「貞子 3D2」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA ●「貞子vs伽椰子 プレミアム・エディション」Blu-ray:6,380 円/DVD:5,170 円 (税込)/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント/KADOKAWA/(C) 2016『貞子 vs 伽椰子』製作委員会/2023年10月の情報です ●「貞子」Blu-ray:5,280円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA ●「貞子DX Blu-ray豪華版』7,480円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

というわけで今回は、映画「リング」25周年を記念して、貞子ファンの筆者が「リング」シリーズの映画とその魅力を一挙に紹介する。

なお余談だが、本記事公開の10月31日がVHSビデオデッキの第一号機が発売された日(1976年・日本ビクター)であることをご存じだろうか。一時代を築いた映像メディアとハードに思いを馳せるとともに、それを使って世界中に呪いを拡散させた貞子に震えてほしい。

平成〜令和を駆け抜ける日本のホラーアイコン、貞子

死後の人間が「異形」になると言えば、西洋ではゾンビやフランケンシュタイン博士の作った怪物、東洋では中国のキョンシーなどが古くから有名で、日本では「四谷怪談」のお岩さんあたりが代表的存在だった。1998年、その異形界隈に颯爽と現れたのが映画「リング」の山村貞子だ。

自身は井戸の中に閉じ込められながら、外の世界にあるビデオテープに「呪いの映像」を念写するという離れ業をやってのける怨霊である。その呪いは、ビデオテープを見た者が1週間後に死ぬというものだ。

貞子は、「白い服をまとった黒髪ロングの女性」という、日本の幽霊然としたシンプルイズベストなデザインで登場した。井戸にいる怨霊というあたりも、皿を数えるお菊さんで有名な「番町皿屋敷」を彷彿とさせる。

貞子が異質なのは、その長い黒髪が貞子自身の顔面を覆い隠しており、表情は見えず、のっぺらぼうに通じる異様さがあった点。また、貞子は一般的な日本の幽霊とは異なり、2本の足で“ちゃんと”歩くのだが、ギクシャクした不自然な動きが不穏で、井戸から出てくるさまは見る者に強烈なインパクトを与えた。

映画「リング」は元々、作家・鈴木光司による1991年刊行の小説「リング」を原作としており、もちろん貞子も原作の登場人物(怨霊)だ。しかし「顔面が長い黒髪で覆われている」「ギクシャクと不穏に歩く」という映像ならではのデザインは、1998年の映画オリジナルのもの。映画「リング」によって、ホラーアイコンとしての貞子の姿が強く確立されたと言えるだろう。ちなみに、ビデオを見終わると電話がかかってくる演出も映画オリジナルだ。

映画「リング」は世界的なブームを起こし、ハリウッドリメイクも果たされた。そして貞子は映画にとどまらず、ありとあらゆるコンテンツでパロディとして消費され尽くした。貞子本人も公式にYouTuberとして活動したり(現在は休止中)、あるときはプロ野球の始球式で強肩を披露したりした。2019年「ニューズウィーク誌」による「世界が尊敬する日本人100」にも怨霊として初めて選出された。もはや貞子はそれ単体で“歩いていける”存在なのだ。

……と思いきや、きちんと本業(?)のホラー映画のほうでもしっかり新作に出演し続けていて、その律儀な姿勢にはリスペクトしかない。

あなたはどの貞子が好き? 映画「リング」シリーズ全9作品を一挙紹介

ということで、1998年の第一作から2022年の最新作まで、貞子が出てくる「リング」シリーズの映画全9作品を順番にご紹介したい。ポイントとして、それぞれの作品で貞子の描かれ方が少しずつ異なっているほか、貞子を演じる俳優も異なることがあげられる。「リング」「らせん」しか見たことのない方も、その続編を見ることでまた新たな貞子の姿を知れるだろう。ぜひ、あなたの好きな貞子を見つけてほしい。

なお、ハリウッドリメイクの「ザ・リング」シリーズや韓国映画「リング・ウィルス」は紹介に含めていない。それらに出てくるのは山村貞子ではなく、サマラ・モーガンやパク・ウンソとしてリスペクトしたい。

▼「リング」(監督:中田秀夫/1998年)
 〜きっと来る〜

「リング」DVD:2,750円(税込)/Blu-ray:4,180円(税込)/発売元:角川書店/販売元:ポニーキャニオン/(C)1998「リング」「らせん」製作委員会

「リング」DVD:2,750円(税込)/Blu-ray:4,180円(税込)/発売元:角川書店/販売元:ポニーキャニオン/(C)1998「リング」「らせん」製作委員会

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
見た者を7日間で確実に死に追い込むという呪いが込められたビデオテープの恐怖を描いた、鈴木光司原作によるホラー映画が初BD化! 巷に勃発する原因不明の突然死。呪いが込められたビデオテープの存在の噂は、都市の人々の間に急速に広まっていった。浅川玲子は、ある事件を追いかけるうちにそのビデオテープを見てしまう――。ローコントラストポジからテレシネしたニューマスター版。

言わずと知れた映画「リング」シリーズ第1作。主演に松嶋菜々子と真田広之という超メジャー俳優を起用した作品で、当時20代の松嶋菜々子がかわいい。しかし、本作が巷で「松嶋菜々子の映画」という観点で語られることは少なく、あくまでも内容で人々の記憶に残る映画となっているのがすごい。

貞子を演じた俳優は、伊野尾理枝(成人期)と白井ちひろ(少女期)だが、本作では貞子の素顔はほぼ出ず、この演出を含めて後にホラーアイコン化する貞子のベースとなる。

なお、実は「リング」の映像化は本作が初めてではなく、1995年にフジテレビで単発ドラマ化されていた。作家・鈴木光司による原作は謎解き要素の多いホラーミステリーの長編小説で、単発ドラマもそれに忠実だったが、対して映画「リング」は、あくまでも「恐怖映画」を前面に押し出した内容に作り替えられている。95分の尺に収まるよう、設定やストーリーはかなりシンプル化されているが、ホラーに振り切った演出が巧みで、見る者に絶大な恐怖感を与えた。

また、ビデオテープとビデオデッキ、ブラウン管テレビ、固定電話、インスタントカメラなど、平成以前のガジェットがキーアイテムとして登場するのも、今となってはひとつの見どころ。映画「リング」シリーズにおける「映像メディアの変遷」は、後に制作される続編でも外せないポイントとなってくる。

▼「らせん」(監督:飯田譲治/1998年)
 〜あなたのせいよ〜

「らせん」DVD:2,750円(税込)/Blu-ray:4,180円(税込)/発売元:角川書店/販売元:ポニーキャニオン/(C)1998「リング」「らせん」製作委員会

「らせん」DVD:2,750円(税込)/Blu-ray:4,180円(税込)/発売元:角川書店/販売元:ポニーキャニオン/(C)1998「リング」「らせん」製作委員会

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
鈴木光司原作のベストセラー小説を映画化した「リング」の続編となるホラー作品が初BD化! 病院の解剖室に送られた男の死体の胃の内容物の中から、数字が羅列された紙切れが発見される。解剖を担当した医師・安藤満男はその男がかつての同級生だったことを知る。安藤は第一発見者の高野舞とともに、その謎に挑もうとするなか、ある不気味な存在が浮かび上がる――。ローコントラストポジからテレシネしたニューマスター版。

上述の映画「リング」の続編となる作品で、1998年当時は「リング」「らせん」のセットでメディアに登場し、同時上映された。1995年の単発テレビドラマ版「リング」で脚本を担当した飯田譲治が、本作では監督としてメガホンを取っている。

こちらも主演は佐藤浩市と中谷美紀に、「リング」と同じ役で真田広之も引き続き登場するという、メジャー俳優が揃い踏み。内容は鈴木光司による「リング」の続編小説「らせん」を原作に、映画「リング」のストーリーに合わせて制作されている。

映画「リング」と比較すると、謎解きが多くなり、原作小説の要素が増えているのがポイント。目の大きい神秘的な中谷美紀のルックスが非常に“ホラー映え”していて、「謎解き要素」と「中谷美紀の美貌」の組み合わせの妙か、怖すぎずかつ謎解きに寄りすぎずという絶妙なバランスで鑑賞できる。なお、原作小説「らせん」を95分のダイジェストにしたような向きもあるので、原作もあわせて読むとより理解が深まるだろう。

本作で貞子を演じた俳優は佐伯日菜子、後半では中谷美紀で、今回はしっかり顔を見せてくれており、恐ろしくも美しい貞子像として記憶に残る。この「ゾッとするほど美しい貞子」は、原作小説の設定を一部受け継いだものでもある。

▼「リング2」(監督:中田秀夫/1999年)
 〜なんであなただけ助かるの?〜

「リング2」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

「リング2」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
鈴木光司原作のホラー小説を映画化した「リング」の続編。中谷美紀、佐藤仁美、松嶋菜々子、真田広之ほか出演。

映画「リング」を監督した中田秀夫が、映画「らせん」とは異なるパラレルワールドの続編として制作した一作。映画の大ヒット作でよくあるマルチバースの世界線へ、「リング」シリーズも分岐したというわけだ。映画「らせん」が原作小説を95分のダイジェストにしたような作りだったのに対し、こちらは完全に新しい物語として制作されている。

主演は、映画「リング」「らせん」と同じ役を演じる中谷美紀。「リング」の主役であった松嶋菜々子が住むマンションや、貞子が育った大島の古旅館などが出てきて、中田ワールドの世界線であることを実感できる。

貞子を演じたのは「リング」と同じ伊野尾理枝で、同作を踏襲した恐怖の象徴として描かれているが、このパターンでは珍しく終盤に少し顔を見せてくれることに注目。とにもかくにも、監督・中田秀夫が「らせん」の中谷美紀を「リング」の演出で調理したといったところなので、ぜひ映画「らせん」と見比べてほしい。あなたは「らせん」派か、「リング2」派か。

(C) 1999 「リング2」製作委員会

(C) 1999 「リング2」製作委員会

▼「リング0 バースデイ」(監督:鶴田法男/2000年)
 〜もし、生まれ変わることができるなら〜

「リング0〜バースデイ〜」 Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

「リング0〜バースデイ〜」 Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
鈴木光司原作「リング」「らせん」の続編。“呪いのビデオ”の貞子の生い立ちを描いたサスペンスホラー。仲間由紀恵、田辺誠一ほか出演。

映画「リング」の前日譚となるストーリー。鈴木光司による小説「バースデイ」に収録された短編「レモンハート」を原作としており、シリーズで唯一、生前の貞子を主人公に描かれた。時代は1960年代で、貞子は舞台役者を目指して上京し、劇団の研究生となっている。そこから暗い井戸の中に閉じ込められるまでの物語が明かされる。

貞子を演じたのは仲間由紀恵。本作で、ひとりの人間として生きている貞子は、影のある美少女として描かれており、映画「リング」シリーズの中では最もかわいい貞子像と言える。同じ劇団に所属する男性との淡い恋愛シーンでは、控えめでいじらしい姿も見せており、なぜこの子が30年後に井戸から出てくることに……と残念で仕方ない。

とはいえ、もちろん本作はただの60年代青春劇ではない。序盤から、貞子の周囲には常に暗い「ナニカ」が付きまとっていて、映画「リング」「らせん」を見てきた者は、「始まりは貞子ではなく、その前にあったということか?」と引き込まれる構成になっている。本作にて、「呪いのビデオ」に映っていたシーンや細かな部分の回収が行われ、1998年の映画「リング」から始まったシリーズはいったんの区切りを迎えた。

(C) 2000「リング0〜バースデイ〜」製作委員会

(C) 2000「リング0〜バースデイ〜」製作委員会

▼「貞子3D」(監督:英勉/2012年)
 〜S<エス>の復活〜

「貞子 3D」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

「貞子 3D」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
鮎川茜が教師を勤める女子高で、動画サイトに投稿された自殺を生中継した映像が噂となる。その生中継を偶然見た人も死んでしまったという。教え子・典子も不可解な死を遂げ、時を同じくして各地で不審死が相次ぐ。警察は一様に自殺と断定するが、みな共通して死の直前にある動画を見ていた。その動画からは、「お前じゃない……」という女の声が聞こえる――。貞子伝説の原点となる、鈴木光司書き下ろしのシリーズ第5弾!

映画公開年の2012年前後を舞台に、新たな「リング」シリーズとして、3D対応映像で制作された一作。原作小説が鈴木光司の「エス」であることを踏まえると、映画「らせん」の延長線上にある世界と見ることができる(特に明言はされない)。主演は石原さとみ。かわいい。

本作公開時点で旧時代のメディアとなっていたビデオテープは登場せず、貞子の呪いはインターネット空間にアップロードされ続ける「呪いの動画」へと変化し、パソコンや携帯電話・スマートフォンなどのメディアを通じて拡散するようになっている。

そう、元々「呪いのビデオ」は、空のビデオテープに貞子の呪いが「念写」されたもので、磁気テープにアナログデータとして呪いが記録されていた。ところが本作では、「ニコニコ動画」の生配信でインターネット回線を通して呪いが拡散。呪いがデジタル信号に変換(?)されている。しかも「404 Not Found」表示のサイトでいきなり動画が再生し出すという小粋な演出まで挟んでおり、貞子のスキルが着実にインターネット社会に対応しているのがわかる。

なお、本作で貞子を演じたのは橋本愛。映画「らせん」の「ゾッとする美人」、「リング0 バースデイ」の「影のある美少女」という特徴を、橋本愛が演じることによってまとめて踏襲してきた感じで、シリーズで最も神秘的な美少女として描かれている。

……が、橋本愛になるまでの貞子は、蜘蛛と人間が合体したような奇形種で、エイリアン的なクリーチャーとして登場する。しかも大量増殖して石原さとみに襲いかかる。そしてこちらの状態でいるほうが長い。「女子のなりたい顔ナンバーワン」と対峙する貞子の気合いを感じる。結論を言うと、そんな奇形種貞子と互角以上に戦う石原さとみの強さを嚙みしめてほしい映画である。おそらく、歴代シリーズで貞子と対峙した人間の中でいちばん強い。

(C) 2012『貞子3D』製作委員会

(C) 2012『貞子3D』製作委員会

▼「貞子3D2」(監督:英勉/2013年)
 〜あの子が生まれた〜

「貞子 3D2」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

「貞子 3D2」Blu-ray:4,180円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
“呪いの動画”事件から5年。鮎川茜と安藤孝則の間には一人娘・凪が生まれていた。しかし茜は出産後に死亡し、孝則は妹の楓子に凪を預け隠遁生活をしていた。その頃、謎の動画による自殺騒動が再び世間を賑わす。謎の自殺は凪の周りで起こっていると気付いた楓子は、一連の事件に凪が関連しているのではと疑い始めるが……。大量増殖する貞子、そして貞子の子。人間はついに貞子に支配される――。最恐アトラクション・ホラー第2章!

「貞子3D」の5年後を描いた続編で、前作と同じく3D対応の映画として制作された。主演は瀧本美織で、自尊心の低い弱気な女の子を演じる。映画「リング」シリーズで弱気な主人公像は意外と初めてなのだが、そのキャラクターゆえか言葉少なにうつむくシーンが多く、瀧本美織のかわいさをもってしても画面がとにかく暗くて怖い。ちなみに貞子が始球式で強肩を披露したのは、本作のプロモーションによるもの。

実は、本作では我々が期待する姿での貞子の出番は少ない。原作小説「エス」から引き継いだ「貞子の子」をキーワードに、呪い自体が現代に受け継がれていくことに注目する内容なのだ。なので、貞子ファンとしては少々寂しいのだが、そこは涙を飲んで、ぜひ「呪いの次世代継承」という大きなテーマを見届けてほしい。人類が貞子に支配される前夜の物語である。

(C) 2013『貞子3D 2』製作委員会

(C) 2013『貞子3D 2』製作委員会

▼「貞子VS伽椰子」(監督:白石晃士/2016年)
 〜バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!〜

「貞子vs伽椰子 プレミアム・エディション」Blu-ray:6,380 円/DVD:5,170 円 (税込)/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント/KADOKAWA/(C) 2016『貞子 vs 伽椰子』製作委員会/2023年10月の情報です

「貞子vs伽椰子 プレミアム・エディション」Blu-ray:6,380 円/DVD:5,170 円 (税込)/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント/KADOKAWA/(C) 2016『貞子 vs 伽椰子』製作委員会/2023年10月の情報です

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
決して出会ってはいけない2つの「呪い」。「呪いの動画」と「呪いの家」の2つの呪いを解くため立ち上がった、霊媒師・経蔵。彼が企てる秘策、それは拮抗した力を持つ貞子と伽椰子を激突させ、同時に2つの呪い滅ぼすという驚くべき計画だった……。

「リング」の山村貞子と双璧をなすジャパニーズホラーの旗手と言えばこの人、映画「呪怨」の佐伯伽椰子。「引っ越した家にコレがいたら絶対に嫌だ」と全力で思わせてくれるビジュアルは、ある意味貞子を超える嫌悪感を抱かせてくれる。

そんな伽椰子が棲み着いた「呪いの家」で、貞子が出てくる「呪いのビデオ」を見たらどうなるのか? ……というホラーファンの妄想を、本当に映画にしてしまったのが本作だ。当たり前だが、直接原作にあたる小説はない。ただ、時系列はおそらく1998年の映画「リング」から分岐した世界線のようだ。

主演は2人で、「呪いのビデオ」を見てしまう山本美月と、「呪いの家」の向かいに引っ越してきてしまう玉城ティナ。これまた美少女揃いだが、少々びっくりなのは呪いの伝播方式だ。前作「貞子3D」「貞子3D2」では最初から「呪いの動画」としてデジタル化されていたが、本作では昔の「呪いのビデオ」を、古いビデオデッキで再生するという律儀な手法でスタート。原点回帰。それでいて、かつては見ると1週間で死ぬルールだったのが、なんと本作ではビデオを見てからたった2日で死ぬ。旧時代のメディアなんざ朝飯前とばかりに、貞子の呪いが大幅にパワーアップしている。

なお、本作の類似品として「エイリアンVSプレデター」や「キングコングVSゴジラ」などの映画を思い浮かべる人も多いと思うが、あらかた間違っていない。とりあえず「貞子VS伽椰子」というタイトルを聞いて我々が期待することは大体やってくれているので、安心してほしい。最後に2人はちゃんとバトルする。

ちなみに「呪怨」と言えば、伽椰子の息子である白塗りの少年・俊雄くんも有名で、もちろん彼も登場する。しかしラストバトルではほとんど活躍できない。なぜなら、貞子が初手から俊雄を戦闘不能にし、早々に伽椰子とのタイマンに持ち込むからだ。そう、本作の貞子像はシリーズで最もアクティブである(演じたのは七海エリー)。ここまで読んで、2人のバトルの結末が気になってきた方も多いことだろう。ぜひ映画本編をチェックしてほしい。

▼「貞子」(監督:中田秀夫/2019年)
 〜撮ったら死ぬ〜

「貞子」Blu-ray:5,280円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

「貞子」Blu-ray:5,280円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
心理カウンセラーの茉優のもとに、ひとりの記憶障害の少女が入院してくる。やがてその少女は、1週間前に公営団地で起きた放火事件の犯人・祖父江が人知れず生み育てていた子供であることが判明。少女と真摯に向き合う茉優だったが、次第に彼女の周りで奇妙な出来事が起こり始める……。見たら呪われる「リング」から、撮ったら呪われる「貞子」へ――。恐怖は、進化する!

鈴木光司の小説「タイド」を原作に、映画「リング」の中田秀夫が久々に「リング」シリーズの監督を務めた作品。そのタイトルはシンプルに「貞子」。もちろん本作の貞子像は、「リング」の系譜を受け継ぐ恐怖に全振りした姿である(演じたのは南彩加)。主演は池田エライザで、つぶらな瞳をギョロつかせながら背後に迫る貞子の存在を感じるシーンなど、美しいルックスがホラーに映えている。

時系列としては、同じ中田秀夫が監督した「リング」「リング2」の正当な続編となる。ただ、「リング0 バースデイ」とは異なる貞子の過去が描かれるため、また新たなマルチバースの「リング」だ。「リング」「リング2」に出演した佐藤仁美がまったく同じ役で21年ぶりに出てきたり、主人公たちがフェリーで大島に渡るくだりがあったり、過去の「リング」「リング2」とつながるシーンが多く、往年のファンが楽しめる内容となっている。

特に、近年の作品では携帯電話・スマートフォンやパソコンの画面を介して登場していた貞子が、久しぶりに“あの登場シーン”を見せてくれる。映画を見終わったあと、部屋に置いてあるテレビが怖くなるのはいつ以来だろうか。そのうえで、「呪いを受ける側が背負っていた宿命」についても言及したのが過去作品にはない特徴だ。

そして注目してほしいのは、本作のキャッチコピー。誰もが動画配信者になれる時代性に合わせ、「見たら呪われる」から「撮ったら呪われる」に進化している。実際これまでと違い、「呪いのビデオ」「呪いの動画」といった単体の映像作品(?)は出てこず、主戦場はYouTube的なネット動画投稿サイトへ。映像の受け手だけではなく、制作者もその対象に……。誰もが簡単に映像制作できるようになり、映像と触れる機会が増えた今、貞子は「よい時代が来た」と思っているのかもしれない。

(C) 2019「貞子」製作委員会

(C) 2019「貞子」製作委員会

▼「貞子DX」(監督:木村ひさし/2022年)
 〜タイムリミットは、24時間〜

「貞子DX Blu-ray豪華版』7,480円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

「貞子DX Blu-ray豪華版』7,480円(税込)/発売・販売元:KADOKAWA

<Blu-ray情報>※価格.com販売ページより
“呪いのビデオ”を見た人が24時間後に突然死するという事件が全国各地で発生。IQ200の天才大学院生・一条文華は、テレビ番組で共演した人気霊媒師のKenshinから事件の解明を挑まれる。呪いがSNSで拡散すれば人類滅亡と主張するKenshinに対し、「呪いなんてあり得ない」と断言する文華だったが、興味本位でビデオを見てしまった妹の双葉から1本の電話がかかってくる……。

2023年10月時点での映画「リング」シリーズ最新作。見る前は「貞子がDXってどういうことだろう」と思うのだが、見終わってからも「つまり貞子がDXってどういうことだろう」と思う一作だ。主演は小芝風花で、IQ200の天才大学院生を演じている。頭がよくてかわいいなんて完璧。天才キャラの主人公が冷静に貞子と対峙するパターンは、映画「リング」シリーズ初で新鮮である。原作小説はなく、完全オリジナルのストーリーとなる。

貞子の呪いを伝播させるメディアとしては、最終的にはスマートフォンとSNSがポイントになっており、ソーシャル化が進む。ただ、ここでも「貞子VS伽椰子」と同じく、昔の「呪いのビデオ」を古いビデオデッキで再生するところから実践するのがていねい。

そして、「呪いのビデオを見たあと、どうしたら死なないのか?」という、1作目の「リング」と同じように生きるための答えを探す構成になっている。もちろん昔とは違う答えが用意されていて、ネタばれになるので内容は書けないが、コロナ禍を経験した我々にとっては感じ入るものがある。

そして本作の貞子像も、「リング」の系譜を受け継ぐ恐怖に全振りした姿であるが、すごいのが呪いの進化だ。過去作「貞子VS伽椰子」にて、「呪いのビデオ」を見てから死ぬ期間は2日に短縮されたが、なんと本作では見てからたった24時間で死ぬ。貞子の怨念がとてつもなくパワーアップしていて、かつての「リング」における1週間のタイムリミットがもはや長く感じられるほどだ。

手元のスマホでさまざまな情報にリアルタイムで触れられる現代において、死ぬまでに1週間の猶予はヌルいと貞子は思ったのかもしれない。時代を経るごとに、我々も呪いへの対応力を試されているのだ。

(C) 2022『貞子DX』製作委員会

(C) 2022『貞子DX』製作委員会

最後に:原作小説もかなり面白いので読んでほしい

ここまで映画「リング」シリーズを振り返って改めて思うのは、各時代を彩る旬の美人俳優が揃っているということ。上ではメインどころばかりに触れたが、それ以外でも若かりし頃の竹内結子(「リング」)や深田恭子(「リング2」)、麻生久美子(「リング0 バースデイ」)などが出演しており、脇役の布陣まで豪華。今後もし新作が作られるなら、どんな美女が出演するだろうかと期待してしまう。

そして最後に絶対お伝えしたいのが、「リング」シリーズはそもそも鈴木光司による原作小説がものすごく面白いので、ぜひ読んでほしいということだ。長編小説ばかりだが、せめて1作目の「リング」だけでも読んでほしい。「呪いのビデオ」がどのように生まれたのか、生きている人間はそれにどのように現実味を持っていったかなど、尺に制限のある映画版では省略された部分がしっかり描かれている。原作は謎解き要素が多いミステリーで、ホラーで、メタ小説でもある。

そして同時に、映画「リング」がいかにうまく95分にまとめられているかも実感できる。特に、誰もが知るクライマックスシーンの「アレ」が、実は映画オリジナルの脚本・演出だったとわかったときの驚きたるや。ビデオテープを呪いのアイテムとして使用した貞子が、現実世界では同じ映像メディアの映画で確固たるホラーアイコンの地位を確立したと思うと、にわかにグッと来るものがある(このあたり、原作「らせん」まで読むと、よりグッと来る)。

映画「リング」シリーズで、平成から令和へかけての映像メディア・ガジェットの変遷に合わせ、貞子の呪いは進化してきた。デジタルカメラが台頭してきたのは2000年前後だが、それまでの銀塩写真とは異なる仕組みであるし、静止画ですらデジタル時代に念写はできないのではないかと思われた。しかし貞子は「やるんだよ」とばかりに、この25年で呪いのデジタル化とネット社会に対応してきたのだ。しかも動画で。やはり貞子(きっと母の山村志津子も)の力は“ホンモノ”であった。

この先、貞子の呪いはどんな媒体でいかなる進化を遂げていくのか? 次の30周年へ向けて、映画の新作と新たな呪いのメディアの登場を期待したい。

杉浦みな子
Writer
杉浦みな子
1983年生まれ・たまに絵も描くライター。価格.comマガジン編集部やオーディオ・ビジュアル専門サイトの編集/記者/ライター職を経て、2023年に独立。コンシューマーエレクトロニクスから「ムー」までを網羅し、各種媒体でAV機器・家電のレビューやオカルト映画のコラムを執筆中。読書と音楽&映画鑑賞が好きで、自称:事件ルポ評論家のオタク系ミーハーです。
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