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28日仕切直し、新開発食品調査部会
疾病リスク低減表示トクホのゆくえは?

 消費者委員会は28日、第60回新開発食品調査部会を都内で開催する。議題は「特定保健用食品の表示許可等についての一部改正について」。
同部会では、1日に開催した第59回新開発食品調査部会に引き続き、疾病リスク低減表示トクホに関する議論が行われる予定。

 2020年12月から21年3月まで3回にわたり消費者庁が開催した検討会では、報告書「特定保健用食品制度の疾病リスク低減表示に関する今後の運用の方向性」が取りまとめられた。報告書では、「虫歯に係る疾病リスク低減表示」、「葉酸およびカルシウムの許可表示の見直し」について速やかに具体的な対応を進めることとされた。

 消費者庁はその後、「むし歯(う蝕)のリスク低減表示の基準の作成」と「現行基準の許可表示の見直し」の2件について、(国研)医薬基盤・健康・栄養研究所(東京都新宿区)に調査・検討事業を委託。結果を受けて、消費者庁が作成した見直し案を前回の調査部会に諮った。

 見直し案では、「むし歯(う蝕)のリスク低減表示」に関して、過去20年間の論文を精査したところ成人を対象とした単一成分の摂取によるう蝕発症の減少を示した論文は見当たらなかった」としたものの、う蝕の発症過程、食品が直接接する歯の表面の状態で評価する特殊性を考慮するかたちで、有効性を明らかにするための根拠資料としてサロゲートマーカー(プラークpH、脱灰および再石灰化)を評価指標として用いることを提案した。また、カルシウムと葉酸の疾病リスク低減表示では、「かもしれません」という表示を「可能性があります」に見直す案を示した。

複数の委員から異論が噴出

 これに対して、「う蝕の発症の減少というエンドポイントを示した論文がないからサロゲートマーカー(代用)を使うというロジックに違和感を覚える。トクホのそもそもの成り立ち、あるいは当部会でこれまで検討してきたことを考えると、エンドポイントをしっかりと位置づけて許可をするというのが基本原則だったが、今回、こういうロジックが妥当かどうか疑問」との異論が複数の委員から出された。また、今回サロゲートマーカーを指標とすることで、他の保健用途にも波及するのではないかとの懸念が示された。
別の委員からは、「危険因子のコントロールにおいて、食品の世界で疾患リスクの軽減をどこまで表現していいのか。別の枠組みを考える必要があるのではないか」との厳しい意見も出た。

拙速過ぎるとの意見も

 「かもしれません」を「可能性がある」に見直す案については、一般消費者から見た場合の分かりやすさを重視する声もあったが、ある委員は「かもしれない」という表現を学術的に正確に、もう少し長い文章でもいいから変えるというような方向に持っていくことの方が適切」とし、検討会で議論されたときのテーマの重さに比べて「拙速に過ぎる」と指摘した。この委員はむし歯(う蝕)の議論についても、「国民への注意喚起が必要であるという重要さを重視するのであれば、それをトクホの方で今までの経緯を含めてどのように適切に着地させるかということを精緻に考えていく方が良い」と述べた。

 「かもしれません」表示について、比較的多くの委員が「国民に対して不親切」、「情報になっていない」などの否定的な意見を述べる一方、「可能性がある」とすれば消費者に過大な期待を抱かせるのではないかとの懸念も示されていた。

 東京大学名誉教授の唐木英明氏は今回の議論について、「難しい問題だが、虫歯についてはデータを重視すべき」との見解を示している。

 第60回新開発食品調査部会は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために一般傍聴者は入れずにテレビ会議にて開催される。29日に音声データが配信される。

【田代 宏】

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