「ゼロコロナ」転換の中国で死者急増 最大100万人超との見通しも 北京市の火葬場は大混雑

2022年12月17日 20時18分
17日、北京の火葬場付近で棺を運ぶ男性ら=AP

17日、北京の火葬場付近で棺を運ぶ男性ら=AP

 【北京=白山泉】新型コロナウイルスの感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策から緩和へ急転換した中国で、死者が急増している。中国政府がワクチン接種や医療資源の準備が整わないまま見切り発車したのが原因で、死者が今後、最大で100万人を超えるとの見方もある。来年の経済運営を決める「中央経済工作会議」は、低迷した景気の回復を優先課題と決めたが、足元の感染爆発が経済を直撃している。
 中国メディアによると、北京市の感染拡大により、「人民日報」の74歳の元記者が陽性となった後に死亡。手術の後遺症があり、集中治療室(ICU)で治療を受けていたという。37歳だった元プロサッカー選手の王若吉さんも感染による糖尿病の悪化で亡くなった。台湾メディアによると、同市内では急増する死者に火葬場が対応しきれず、周辺には遺体を乗せた車列ができているという。
 中国衛生当局は11月26日以降、死者は出ていないと公表している。しかし、持病を持つ患者らの死亡が急増している可能性がある。発熱外来にも患者が殺到し、北京市では軽症の医療従事者は出勤が求められている。河南省でも衛生当局が来年3月まで医療従事者の休暇返上を発表した。
 経済や行政への影響も深刻化している。日系企業社員は「すごい感染力。家族が順番に感染し、社内も8割が感染した」と明かした。北京市内では物流が滞り、ネットスーパーや医薬品の配達も遅れている。外交筋は「中国政府の各部門でも相当数の感染者がおり、機能停止に陥りつつある」と危機感を抱く。
 中国疾病予防管理センター疫学専門家の呉尊友氏は「(来年1月の)旧正月の帰省に伴って内陸部にも感染が広がり、感染の波は来年3月まで続く」との見通しを示した。
 防疫対策の急転換に伴う混乱の中、今月15〜16日、中央経済工作会議が開かれた。習近平しゅうきんぺい国家主席らが出席し、「消費の回復を最優先させる」として、ゼロコロナ政策による消費減少に危機感を示した。しかし、「現在の感染の波が落ち着くまでは景気の回復は難しい」(エコノミスト)との見方が有力だ。

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