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米政策金利、ウォール街やFRBが考えるより高くなる可能性も

  • 労働市場の底堅さと根強い高インフレ、より多くの利上げを必要に
  • 与信環境の引き締まりが最終的にリセッション引き起こすリスクも
Jerome Powell, chairman of the US Federal Reserve.

Jerome Powell, chairman of the US Federal Reserve.

Photographer: Al Drago/Bloomberg

昨年は米投資家と金融当局者の大半が、インフレがどこまで進むかを過小評価していた。今はそのインフレを低下させるために金利がどこまで高くなる必要があるかを過小評価しているかもしれない。

  米連邦準備制度による40年ぶりの積極的な引き締めにもかかわらず、米経済と金融市場は勢いよく新年入りした。雇用者数は増え小売売上高は急増、株価は上昇した。

  連邦準備制度の目標(2%)よりはるかに高い水準でのインフレ高止まりと合わせ、これは事態を落ち着かせるためにより多くの利上げが必要なことを意味する。

米景気の底堅さが持続、FRBへの追加利上げ圧力に-1月の経済指標

Investors Started Betting on More Fed Hikes

Source: Bloomberg

  JPモルガン・チェースのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン氏は「米金融当局が市場の想定以上に利上げを実施する可能性は十分にある」と述べた。

  リスクは、消費者が新型コロナウイルス禍の間に積み上げた貯蓄を取り崩すのに伴い、引き締まった与信環境が最終的にリセッション(景気後退)を引き起こすことだ。

  こうした貯蓄と勢いのある雇用市場が、家計が物価と借り入れコストの急上昇に対して持ち応えることを可能にしている。ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏によれば、貯蓄の残りは1兆6000億ドル(約214兆円)程度と見積もられる。

  投資家は既に、今回の引き締めサイクルでのピーク金利予想を引き上げている。米短期金融市場の取引によれば、投資家はフェデラルファンド(FF)金利が7月に5.2%になると想定している。2週間前の予想ピーク金利は4.9%だった。現在の誘導目標レンジは4.5-4.75%。

  エコノミストはいわゆるターミナルレート(金利の最終到達点)を予想しようとしている。ドイチェ・バンク・セキュリティーズの米国担当チーフエコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は今週、自身の予想を5.6%とこれまでの5.1%から引き上げた。労働市場の底堅さと緩めの金融環境、高インフレを理由に挙げた。

  連邦準備制度当局者らの発言もタカ派色を強めている。

  ダラス連銀のローガン総裁は14日、「経済見通しの変化に対応するため、あるいは望ましくない緩和状況を相殺するために必要となれば、従来予想よりも長期間の利上げ継続の準備を怠らないようにしなくてはならない」と述べた。

ダラス連銀総裁、従来予想より長期間の利上げ継続が必要になる可能性

  クリーブランド連銀のメスター総裁は16日、前回1月31日-2月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でも0.5ポイントの利上げを実施する説得力ある論拠はあったと指摘した。同総裁は今年のFOMC会合で議決権を有していない。

クリーブランド連銀総裁、50bp利上げでも説得力あった-前回会合

  昨年12月のドット・プロット(金利予測分布図)によれば、ピーク金利は中央値で5.1%と見込まれていた。3月に新たな予測が発表される時にはこれよりも高くなっていても驚かないとエコノミストらは言う。

  ティー・ロウ・プライス・アソシエーツの米国担当チーフエコノミスト、ブレリナ・ウルチ氏は「6月と7月のFOMC会合でも利上げが続くリスクは相当大きい」と話した。広く予想されている通りに3月と5月も利上げをするとすれば、目標レンジは5.5-5.75%になる。

  元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのケン・ロゴフ氏は今週のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、インフレを抑え込むために金利が6%になっても驚かないと語った。

  米問題評議会(CFR)の上級研究員、セバスチャン・マラビー氏は、政治も当局が2024年よりも今年のうちに利上げすることに傾く一因になるかもしれないと指摘する。24年には大統領選挙がある。

  「米金融当局が引き締めをしなければならないのなら、選挙の年にはしない方がずっといい」と同氏は述べた。

  一方、パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏は年初の景気の強さの一部は暖冬が理由だとして、これ以上の利上げは不必要にリセッションを引き起こすリスクがあると論じた。

  しかし、オバマ元米政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェーソン・ファーマン氏は14日、1月の米消費者物価指数(CPI)が前月比で0.5%上昇と前月の0.1%上昇から加速したことが分かった後の発言で、「インフレは悪化している」と指摘した。  

Actual and Forecast US Inflation

Source: Bureau of Labor Statistics, Bloomberg economist surveys

原題:US Rates May Be Heading Higher Than Wall Street or Fed Think (1)(抜粋)

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