【11月4日 People’s Daily】中国、欧州連合(EU)、インド、日本、韓国、ロシア、米国の7極が共同で進めている国際熱核融合実験炉(ITER)計画。「人工太陽」を創造する構想は多くの困難と時間を要するが、夢の実現に向けて歩みを一歩ずつ進めている。

 原子力発電のエネルギー源は核分裂だ。核分裂は、ウランやトリウムなどの重い原子核が複数の原子核に分裂して大量の熱エネルギーを放出する。これに対し核融合は、水素などの複数の軽い原子核が融合して少し重い原子核となる際に大きなエネルギーを放出する。太陽は四六時中、核融合をすることで膨大なエネルギーを生み出している。

 核融合の燃料となる重水素やリチウムは海水から無尽蔵に確保できる上、放射性物質を生み出さない特性があり、最も理想的なクリーンエネルギーの一つといわれる。核融合反応炉が完成すれば、太陽のように人類に常にエネルギーを提供し続けられる。人類共通の夢である「人工太陽」を実現する第一歩として、ITER計画は核融合の科学的、技術的可能性を検証する。

 ITER計画は2006年に協定が結ばれ、核融合反応の中でも最も実現しやすい重水素-トリチウム反応が研究対象に選ばれている。今後は2025年に実験炉で最初の核融合反応を実現する予定。2035年に核融合の運転開始を目指す。その実現には多くの難題も立ちはだかる。

 核融合の原理ははっきりしているが、その実現は困難を極める。1億度以上の高温を保ち、1立方センチメートルの中に100兆個超の原子核を、1秒以上閉じ込めるという「ローソン条件」を満たす必要がある。そして重水素-トリチウム反応の制御試験、冷却材による安全性の確保など、科学的、技術的に高いハードルを乗り越えていかなければならない。

 また、ITER計画を取り巻く状況を見ると、計画推進に時間がかかる4つの要因がある。第1に、世界最大の超電導コイル、真空容器、電気供給システム、冷却システムなどの製造が時間を要すること。第2に、原型炉で繰り返し大量の科学的、技術的検証が必要なこと。第3に、参加する各国が必要な機器を製造しているが、各国の能力や進捗(しんちょく)状況にばらつきがあること。第4に、参加各国の経済情勢や政治情勢により、ITER計画への影響があることが挙げられる。

 その中で、中国はITERに必要なマグネットサポート、補正コイルシステム、ガス注入システムなどの大型重要部品を受け持ち、今年に入り超電導磁石や補正コイルをITERに引き渡している。

 ITER計画から実際に核融合をコントールして商用段階に入るまで、その中間で実証炉の実験も必要となる。中国は今後も、核融合反応の核心技術や商業炉開発に向けて積極的な役割を世界に提唱していく。「人工太陽」の実現に向け、各国の科学者と政府の共同努力と不断の探求が求められている。(c)People's Daily/AFPBB News