復活のロマチェンコ、T・ロペスとの再戦&王座奪還へ前進…12月にNY・MSGで実現か

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中谷正義を強打するワシル・ロマチェンコ

現地時間6月26日、米国ラスベガスで行われた再起戦で、中谷正義(帝拳)を9回TKOで下した元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)。その宿敵、WBAスーパー・WBCフランチャイズ・WBO・IBF世界ライト級統一王者テオフィモ・ロペス(米国)の父親が12月の再戦を認めたと、専門メディア『Boxing News 24』などが伝えた。

2020年10月18日、ロマチェンコは自身の持つWBAスーパー・WBCフランチャイズ・WBO世界ライト級王座と、ロペスの持つIBF同級王座の4団体統一戦で12回判定負けを喫し、3団体王者から陥落、4団体統一に失敗。ロペス戦前に再発した右肩の手術を経て、約8カ月ぶりの再起戦となる中谷戦を26日、ラスベガスのバージンホテルズ・ラスベガスで迎えた。

初回、バッティングで額を切ったロマチェンコだったが、身長、リーチで勝る中谷の懐に踏み込み、左ストレートを軸に右フックも効果的に打ち込んでいった。5回、クリンチを抜けたロマチェンコが体勢を崩した中谷に右を浴びせ、1度目のダウンを奪う。その後も手数を緩めないロマチェンコに対し、中谷は顔面を大きく腫らしながらも食い下がった。だが、ロマチェンコがラッシュを仕掛け、9回1分48秒、レフェリーストップとなった。

試合直後、WBA・IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)が自身のTwitterで「世界最高峰のテクニックは凄い…」とシンプルに呟いたことでも、"精密機械"と揶揄されるロマチェンコの完全復活を証明しているだろう。テクニックだけではない。パンチを浴びた中谷の顔面が歪む度に、世界中のファンが慄いたのだろう。SNSでも話題になった。

圧倒的な内容で復活を果たしたロマチェンコは、試合直後のインタビューでロペスとの再戦について聞かれ、「皆が待っている。再戦をしようじゃないか」と明言した。

現在新型コロナウイルス感染で療養中のロペスだが、8月14日に予定されていたジョージ・カンボソス・ジュニア戦が不透明な状況だ。9月11日延期説と並行して、ロペスの妻の出産のため、秋に延期なったという報道があったばかりだった。ところが、ロペスの父であるロペス・シニア氏がまた別の可能性を示した。

ロペス・シニア氏は、ロマチェンコ対中谷戦終了後、ESPNの中継番組に登場、プロモーターのボブ・アラム氏と言葉を交わした。ロペス・シニア氏は「息子にもう一度戦うよう説得できると思う」と話し、ロマチェンコとの再戦を示唆したのだ。さらに言葉を続けたロペス・シニア氏は、カンボソス戦後に、12月にニューヨーク(マディソン・スクエア・ガーデン)でロマチェンコとの再戦を行うプランを口にした。現実的に12月に試合を行う場合、コンディションを考えても8月14日かそれより前というのが妥当だろう。

ロマチェンコは、WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・WBA世界ライト級正規王者のガーボンタ"タンク"デービス(米国)とのカードも検討されていたが、デービスは同26日にマリオ・バリオス(米国)に勝利し、WBA世界スーパーライト級タイトル獲得と3階級制覇を達成。試合直後、プロモーターのフロイド・メイウェザーが次戦は自社かPBCの契約選手と戦わせる意向を示したことで、ロマチェンコとの直近の対戦は立ち消えになったと見られる。

また、ロマチェンコ、ロペスに対してWBC同級正規王者デビン・ヘイニー(米国)とのマッチアップの線もあったが、ともにアラム氏のトップランク社の契約下にあることも踏まえると「ロマチェンコ対ロペス第2戦」の実現性の方が高いのかもしれない。

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著者
神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。