政府の「接種記録システム」実態を反映せず?…「接種数が把握できない」自治体も

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 埼玉県内の全63市町村で高齢者向けの新型コロナワクチン接種が始まる中、少なくとも10市町で、直近の接種状況を把握できていないことが、読売新聞の調べでわかった。政府の発表では、5月30日時点で延べ21万7007人の県内高齢者に接種したことになっているが、接種状況を政府のシステムに正確に記録できていない自治体があり、「実態を表していない数字」との声が上がる。現状でどれくらいの住民に接種できているかわからず、今後のワクチン確保への影響を懸念する自治体もある。

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 6月1日時点で、高齢者向けのワクチン接種は県内63市町村で、公共施設などでの集団接種や、かかりつけ医などによる個別接種の方法で始まっている。

 接種を受けた人の氏名や接種日などは、接種券に記載された18桁の数字を専用端末で読み取ることで、政府の「ワクチン接種記録システム」(VRS)に記録される。1回目、2回目それぞれの接種時に記録するため、市町村は「1回の接種だけで終えてしまう人がいないか」「3回以上の接種を受ける人がいないか」などと確認することもできる。

 だが、読売新聞の取材では、県内の10市町が「現状の正確な接種者数が把握できない」「一部把握できていない」「実際の接種とデータに時差がある」などと回答した。

 1日に高齢者への集団接種が始まった朝霞市の担当者は「接種体制の整備や市民からの問い合わせ対応に追われ、記録を確認する余裕がない」と打ち明ける。鶴ヶ島市の担当者も「職員が限られている中で、記録よりも接種を進めることを優先している」と話す。

 タブレット端末やシステムがうまく作動せず、記録に支障が出たケースもあった。行田市の担当者は「数字の読み取りがうまくできず、職員同士の読み合わせによる確認作業に時間がかかり、実際の接種数と記録の数字との間にズレが生じた」と話す。その上で「同様の自治体は他にもあるはず。システムの数字がどれだけ実態を反映できているのか」と疑問を投げかける。このほかの市や町でも、システムのトラブルなどにより、記録が遅れたところがあった。

 川口市では、接種してからVRSへの記録までに1週間程度の差が生じている。個別接種を担う医療従事者の負担を減らすため、市が140か所の医療機関から毎週予診票のコピーを回収して、まとめて記録しており、時間差が生じているという。市の担当者は「『接種後、即記録』という国のイメージと、現場の実態は異なる」と指摘する。

 「接種状況が把握できなければ、国に要求するワクチンの量にも影響が出る」。狭山市の担当者はそう懸念する。同市では個別接種を始めたが、現時点では各医療機関に送ったワクチンを全て使用しているとみなし、その量をもとに接種を受けた人数を推計しているという。ただ、担当者は「今後必要なワクチン量を知るためにも、現在どれくらいの人に接種しているのか知ることが大事だ」と話している。

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