1億年前の琥珀(こはく)の中から世界最古の精子を発見したと古生物学者らが発表しました。この精子は恐竜のものではなく、体長よりもはるかに長い精細胞を持つ、貝虫のものとのことです。

Giant sperm and reproductive organs in 100-million-year-old ostracods----Nanjing Institute of Geology and Palaeontology Chinese Academy of Sciences

http://english.nigpas.cas.cn/rh/rp/202009/t20200914_243042.html

100 million-year-old sperm is the oldest ever found. And it's giant. | Live Science

https://www.livescience.com/oldest-sperm-found.html

100-million-year-old giant sperm trapped in amber is world's oldest

https://newatlas.com/science/worlds-oldest-giant-sperm-amber/

貝虫は古くはカンブリア紀の化石から発見されていますが、現代でも生息しています。貝虫の大きさはミジンコ程度の0.5〜2mmほど、全身が2枚の貝に覆われており、エビやカニのような附属肢を時おり貝の外に出すとのこと。

貝虫は総じて非常に小さな生き物ですが、貝虫が持つ精細胞は体長に比して大きく、最長のものでは11.8cmに達するとのこと。2020年9月16日の研究報告では、中国科学院の古生物学者らが1億年前の化石から貝虫の巨大な精子を発見したことを明らかにしました。

問題の精子は、ミャンマー北部で発見された切手サイズの琥珀の中から発見されました。この琥珀の中には39匹の貝虫が閉じ込められており、うち31匹は新種でした。新種の貝虫は「Myanmarcypris」と名付けられたとのこと。Myanmarcyprisは体長0.59mmほどしかありませんが、研究者はMyanmarcyprisのメスが50マイクロメートルほどの卵を持っており、オスから受け取った精子を保存する受精嚢に「スパゲッティのようなもの」が入っていることに気づきました。

受精嚢をコンピュータ断層撮影して3次元画像を作成した結果、含まれていたものは「世界最古の精子」だと判明しました。



これまで発見されていた「世界最古の精子」は5000万年前のものでした。研究に参加したルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン大学のRenate Matzke-Karasz氏によると、巨大な精子を持つ動物は生殖に多くの時間とエネルギーがかかりますが、1億年前でも貝虫が大きな精子を持ち生殖を行っていたことは、「刺激的な発見」とのこと。

以下は、1億年前に生きていた貝虫が交尾する様子が再現されたイラスト。



またMatzke-Karasz氏は、水生動物であるはずの貝虫の化石が、樹脂から生まれる琥珀に保存されていたことにも驚きを示しています。今後はさらに、他の時代の琥珀から貝虫の化石を見つけ出したいとMatzke-Karasz氏は述べました。