2月27日に東京・新宿駅東口のアルタ前広場で、カシオ計算機が提供するスマートフォン向けアプリ「ピカピカメラ」の体験イベントが行われた。

ピカピカメラは、目に見える光の点滅でデジタル通信を行う「可視光通信技術」を利用したコミュニケーションカメラアプリ。赤青緑に色が変わるマーカーの点滅パターンをアプリのカメラ機能から読み取ることで、画像やメッセージを受信したり、指定のWebページヘアクセスしたりできる。

イベント会場は、東京・新宿駅東口のアルタ前広場。カシオの電子ピアノ「Privia」を使った演奏会も行われた

イベントでは、アルタビジョンに映し出されたマーカーの点滅を読み取ることで、カシオの女性向け耐衝撃ウオッチ「Baby-G」が当たる抽選会をはじめ、ナカジマコーポレーションのオリジナルキャラクター「かえるのピクルス」と車メーカー「アウディ」の特製スタンプの配布が実施された。キャラクターのスタンプや画像は、ユーザーのスマートフォンに保存され、ピカピカメラの中で自由に使える。

イベント中にアルタビジョンに映し出された映像。右下の丸いマーカーが一定のパターンのもと、赤青緑の3色で点滅し、そのパターンによって特定のデータを送信(写真左)。スマートフォンでアプリ「ピカピカメラ」を起動し、カメラ機能でこのマーカーを読み取ると、パターンに応じた画像やメッセージを受信できる仕組み(写真右)

「ピカピカメラ」を操作している画面。カメラ機能を実行し、マーカーを照準に合わせる(写真左)。映像全体から自動的にマーカーを探し出すことも可能だ。マーカーが認識されると、対応するコンテンツを自動的にダウンロード(写真中)。カメラで使える専用スタンプやWebサイトへのリンクが表示される(写真右)

ダウンロードしたスタンプは、ピカピカメラでのスナップ撮影時に合成できるほか、Twitter経由で共有することが可能だ。イベントでは、Twitterに投稿した写真が、アルタビジョンに大画面で映し出される場面もあった。

イベントで入手したスタンプは、ピカピカメラの「コレクション」に登録される(写真左)。スタンプを選択後、「カメラで撮影する」を実行(写真中)。スナップ撮影の写真にスタンプを合成できる(写真右)。スタンプは位置や大きさも変えられる

アウディのコーナーでは、書き割り風のスタンプも配布された

撮影した写真にハッシュタグを含めてTwitterに投稿すると、アルタビジョンに映し出された

また、アルタビジョンの映像とピカピカメラを連動させた、キャラクターの人気投票テストも行われた。ビジョンに映し出された複数のマーカーをピカピカメラで読み込むと、画面に投票ボタンが表示される。画面上で気に入ったキャラクターのボタンをタップすると投票でき、結果が瞬時にビジョンへ反映されるというわけ。大型の屋外ビジョンを使ったインタラクティブなイベントとして注目を集め、道行く多くの人が足を止めて、自分のスマートフォンにピカピカメラをインストールし、アルタビジョンに向けていた。

アルタビジョンに映し出された3種類のキャラクターと、それぞれに対応する点滅マーカー(写真左)。ピカピカメラでマーカーを認識したあと、各キャラの投票ボタンをタップする(写真中)。右のキャラクターのカウントが増えていることからも分かるように、投票結果はリアルタイムでビジョンに反映。(写真右)

アプリ側には各マーカーに対応するボタン(実際には画像のWebリンク)が表示される

災害時の通信や救助にも活用できる

カシオは、2014年2月末に法人向けの可視光通信システム「ピカリコ」サービスを公開している。今後はピカピカメラも、ピカリコのシステムの一部として位置づけられる。将来的には、ピカリコのシステムを応用し、街の公共/商業施設や看板、あるいは各種電化製品に組み込まれたLEDなどをマーカーとして、可視光通信でユーザーが求める情報を配信することを想定しているという。

法人向けの可視光通信ソリューション「ピカリコ

「ピカリコ」を統括するカシオ計算機 OIT企画推進部の飯塚宣男氏

例えば、街のカフェに設置した光源からクーポンを受信したり、家電に仕込まれたLEDから故障時の対処法を説明した動画にアクセスするといった利用が可能。具体的には、「掃除機のLEDが点滅」→「その点滅をスマートフォンのピカピカメラで読み取る」→「スマートフォンの画面に掃除機からのメッセージ(『ゴミが溜まったので捨てて下さい』など)」→「さらに操作方法の動画も表示」といった機能だ。

「目に見える点滅」でユーザーの注意を引くことができるため、トラブルや災害発生時の緊急的な情報伝達手段としても適しているという。ちなみに、人間が認識できるほど低速な光の点滅による可視光通信を、実用レベルで手がけているのはカシオだけとのこと。

また、今回のイベントのように、大型の屋外ビジョンでマーカーを表示することで、離れた場所からでもデータを受信できる点がメリットのひとつだ。天候などにもよるが、直径2メートルの点光源を用意することで、100メートル先からでもデータを受信できるいう。

カシオはさまざまな企業・団体ともテストを行っており、例えば海上のブイを使った検証では、夜間で約400メートル先の光源からデータを受信できたとのことだ。大型ビジョンや専用光源だけでなく、壁面に投影したスポットライトの光からでもデータは受信できるので、システムの利用に際して必ずしも施設を改修する必要はない。

イベント会場からアルタビジョンまでの距離は30メートル程度だったが、スムーズに情報を受信できた

ちなみに、マーカーの点滅で端末が受信するのは、9ビットのIDコードだ。このIDコードをピカピカメラからクラウドサーバーへ問い合わせることで、IDコードに対応したデータを端末で受信する仕組みだ。このため、データ本体を受信するためには、スマートフォンやタブレットなどの端末がインターネットに接続できることが条件となる。データの送受信状況はサーバー側で管理できるため、イベントなどで用いられたピカリコシステムの正確な効果も把握できるそうだ。

イベント用に、大規模なWebシステムを構築する必要もないのも大きな特徴。今回のイベントで各コンテンツホルダーが用意したのは、スタンプ用の画像素材と動線をまとめたExcelワークシートだけ。QRコードを使うイベントだと、QRコードごとにWebページが必要となってコストも高くなるが、ピカリコのシステムなら必要最低限の手間でコストも低く抑えられるという。

ピカリコのシステムは2014年春に大規模なアップデートが予定されており、特にピカピカメラでは操作性が大きく向上するとのことだ。将来的には、現在の2倍となる18ビットのデータを可視光通信で送受信することを想定しているという。これからの進化が楽しみな技術と機能だ。