もう九巻目。おちか母になるの巻。”小旦那”富次郎が迷いながらも百物語の聞き手を立派につとめていく様子を、読者は楽しみにしている。今回も人間の醜さと強さを見事に物語に込めてくれた作者に敬礼。『青瓜不動』『針雨の里』は本当に面白い。こんな話は宮部作品ならではのもの。どうしてこんな話を着想するのだろうか。どの話も現代にも通じる理不尽が描かれているので、切なくなり、また恐ろしくなる。ただのホラーとは違うのだ。

名著です。一気に読んでしまいました。単なる闘病記ではなく、さまざまな著作の引用を用いて人生観を示し、私の蒙を啓いてくれました。もともと、絶望名言のラジオで、本の紹介者として頭木さんには親しみがありました。こんなに過酷な病気だったとは驚愕です。病について、またそこから広げて多様性についても、知らなかったことも多く、自分が鈍感だったことを思い知らされました。関連書籍も読みたい。

昨日、国際こども図書館での竹内薫さんの講演会を聞きに行きました。カタリンカリコさんの業績の紹介と、この本ができるまでの経緯のお話でした。この本は竹内薫さんが指導のもと、フリースクールのこどもたちによる翻訳だそうです。たとえ難解でも、たとえ用語だけでも、子供のうちから科学に接するのはいいことです。今は可愛い絵本があるのでたくさん若者や子供に触れてほしい。大人もたのしめます。

昨今、インフラともいえるような大きな商業施設が次々閉店し、建物も解体されて街の景観さえ変わっている。時々欲しいものがあると、今はもうない店の売り場が脳裏に浮かんでくる。これは台湾・台北にかつてあった大型ショッピングモールを舞台にした連作短編集である。作家は70年代の生まれなので、ここで幼少期を過ごしたようである。ノスタルジーと生死の境を感じる敏感な魂が不思議なマジシャンのいる橋を介して語られている。海外文学はあまり読まないから素晴らしいものに当たるとうれしい。村上春樹作品のような小説だと思った。

中山作品にしてはちょっと物足りなかった。テーマはマスコミ報道？

もう九巻目。おちか母になるの巻。”小旦那”富次郎が迷いながらも百物語の聞き手を立派につとめていく様子を、読者は楽しみにしている。今回も人間の醜さと強さを見事に物語に込めてくれた作者に敬礼。『青瓜不動』『針雨の里』は本当に面白い。こんな話は宮部作品ならではのもの。どうしてこんな話を着想するのだろうか。どの話も現代にも通じる理不尽が描かれているので、切なくなり、また恐ろしくなる。ただのホラーとは違うのだ。

主人公はいまで言うならジャーナリスト又は編集者のような職でしょうか。仕事をしながら仇を追う。真実は知るべきか否か？とても辛い境遇におかれながらも、芯の通った立派な若者でした。争い事は親しい間に起こり、憎悪もひとしお。長屋の人々が実に魅力的です。

”宇宙”の意味はそういうことだったのね、宇野くん。お姉ちゃんもいい人。外見からはわからない障害を持っている人はたくさんいる。あの人変だよね、頭悪いよね、つかえないよね。それで済ませられて、自分がままならないために自分を責めてしまう人は若者に限らず多くいるだろう。ここにはそんな人物が３人出てきた。不思議な転校生宇野くんは汚いびっしり書かれたノートをもっている。そこには「泣くのは家に帰ってから」と書かれている。そのほかにも生きる工夫がたくさん書かれている。なんて強い人だろう。続き、ぜひぜひ読みたいです。

エッセイストと評論家の境がわからなくなるほどの分析だ。「さかい」だけに？なんていう駄洒落はおいといて、水上金閣寺と三島金閣寺の対比は生死観、女性観、故郷観などにまとめられ、読みごたえがあった。酒井氏の著作は何気なく読んで楽しいエッセイの域を超えている。三島の『金閣寺』も水上の『五番町夕霧楼』『金閣炎上』も学生の時に読んだが、題材が同じなんだねーくらいで、こんな対比で考えたことはなかった。

すごい！驚嘆です。刀鍛冶、左官、桶職人、畳刺しなど職人の世界を描いていて、その画力が圧巻。私はコミックはあまり知らないのだが、この漫画家は有名なのだろうか？細密なタッチとラフな描写のメリハリが巧みで、登場人物が魅力的だ。どうやって取材したのかも興味がわく。新しい畳の香りがしてきそう。鍛冶の火の粉が飛んで来そう。ぜひみんなに薦めたい。メディアでも大変話題に上っていたようです。

記憶があいまいになって認識が揺れるというのはカズオ・イシグロの世界を想起させます。また、二人の人格が入れ違うという「とりかえばや」的な要素もちょっとあり、おもしろい。湊先生は作者そのものなのでしょうか。少なくとも私にとっては現実感が乏しいストーリーで、感情移入はしなかったけど、ところどころリアルなので、そのアンバランスが魅力なのかもしれない。すごーくおもしろいというわけではないけど、一気読みさせられる佐藤正午ワールドです。『身の上話』のときも、”そんなわけないだろー”と思った記憶があります。

マーミーちゃん危機一髪！！はらはらしました。今回はただのいたずらではなく、ちょっと感謝されたぐんだん。細部も侮れない絵本なのです。おいしそうな食べ物がいっぱいで、わくわく。

ひがしちからさんの絵は大好き。子供の元気なエネルギーが生き生きと伝わるような絵です。かんちゃん(男子)とゆいちゃん(女子)が反対方向に回って、出会ったらどーんじゃんけん。表紙のきつねくんとカエルさんの真剣な表情がかわいくて、この絵本を手に取りました。かんちゃんが出会ってどーんじゃんけんに挑んだ動物は、その他にもいます。なんとびっくり‼️最後はゆいちゃんと無事会えるのですが、ゆいちゃんもここまで来るのは大変だったと言ってます。彼女はどんな動物たちとじゃんけんしたのかなあ？想像しちゃいます。

あのころ、東日本大震災後の原発事故の時に東電に対して持った疑惑と怒りを思い出した。いけない。時が経って忘れてしまい、再稼働のニュースにも鈍くなっている。太陽神アポロンが、太陽に代わるエネルギーを自分で作れるつもりになった人間をあざ笑っている。そんな意図のタイトルである。緊迫感あふれるクライマックスは、このままドラマ脚本になるくらいである。さすが中山七里。